多摩高校は入試倍率が1.5倍以上と高く、受験するのに勇気のいる学校だと思う。2024年度に学力向上進学重点校に指定され、ようやく実力にマッチしてきた。2019年度にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受け、2024年にSSH II期の指定を受けている。
おまけに校舎が新しい。
JR南武線宿河原駅から徒歩8分、小田急線登戸駅からも徒歩18分で行ける。
アクセスも良い。
多摩高校の設立は1956年である。柏陽高校や川和高校よりも歴史は長い。
何故、昨年度まで進学重点校に指定されなかったのかがよくわからない。
進学重点校に指定されたので、横浜市北部から多摩高校を目指す受験生はさらに増えると思う。多摩高校か川和高校かで悩む受験生はどのように考えたら良いのだろうか。以下、多摩高校の教育課程の特徴、大学合格実績、入試難易度の順に見ていきたい。
教育課程の特徴
70分×5校時である。
川和は50分×6/7校時。子供が高校生になって初めて気付いたが、1日の授業数が少ない方が持ち運ぶ教材が少なくて良いかもしれない。高校の科目と教材はとにかく多い。
高1では、地理総合と歴史総合の両方を履修する。その代わりに、理科は物理基礎と化学基礎の2科目になる。SSHの教育課程の特例としてMeraki探究基礎がある。
地理総合と歴史総合の両方を履修する学校は少ない。川和は地理総合のみで、理科基礎3科目を履修する。
高2では、地理探究、日本史探究、世界史探究、化学から1科目を選択履修し、生物基礎を履修する。また、Meraki探究がある。
化学を選ぶかどうかで実質的に文系理系に分かれる。理科の進度は遅い。川和は文系理系に分かれ、理科の進度は早い。
高3では、各自が進路に応じて選択科目を選ぶ。Meraki探究グローバル(英語での成果発表)がある。
相対的な比較になるが、川和高校が大学受験に向けた効率を重視しているのに対して、多摩高校は深い学びを重視している印象を受ける。
2024年度大学合格実績
2024年3月卒業生274人+前年度卒業生のうち進学準備他34人=308人を分母にして合格率を計算した。
参考記事:
神奈川進学重点校+YSFの筑波・農工・都立大合格圏(2024年度入試) - 公立ルートを行く
難関国公立大学合格者数23人(現役19)
難関国公立大学合格率 7.5%
筑波大(理系)合格圏 7.5%
(浪人率11.7%)
2023年度は19人(現役18)
東北大は7名もいるのに北海道大はゼロ。東工大は5名もいるのに筑波大は1名だけ。少し偏りがある。
準難関国立大学合格者数25人(現役22)
難関・準難関国公立大学合格率 15.6%
農工・電通大合格圏 15.6%
2023年度は23人(現役23)
国公立大学合格者数83人(現役73)
国公立大学合格率 26.9%
2023年度は66人(現役64)
2024年度の大学合格実績は前年度よりも伸びている。しかし、高校入試の難易度を考えると、国公立大学合格率26.9%はむしろ低い印象を受ける。(川和高校の国公立大学合格率は35.5%である。)
高校入試難易度
2025年度用神奈川県高校受験案内(声の教育社)に掲載された情報を利用。
多摩高校の2024年度入試倍率は1.54倍で、前年度の1.78倍から低下したが、それでも高い。
合格者平均は、内申124.4、学力検査421.2点、特色検査約56点、全県模試偏差値67.8。内申、特色検査、全県模試偏差値は前年度よりも上昇した。難しくなった学力検査についても、前年度から▲11.7点に留まっている。
全県模試偏差値と学力検査得点のバランスが少しおかしい(偏差値67.8なら学力検査415点、学力検査421点なら偏差値68.6が適正値)。内申124も低い。
合格者平均を使ってS値を計算すると986点になる。第1次選考のS値ボーダーは942.5点とのことで、合格者平均とボーダーの幅は43.5点と大きい。
合格者平均とボーダーの幅が35点ぐらいだとしっくりくるので、自分の感覚とは大きくズレている。
多摩高校の合格者平均の内申124.4は、学力検査の得点や全県模試偏差値を勘案すると3点ぐらい低い感じがする。もしかすると、川崎市立中学校の内申の付け方は他の地域よりもかなり厳しいのかもしれない。内申3点はS値に換算すると8.9点と大きい。横浜市からの受験生が増えると、川崎市の受験生は内申でさらに不利になるのではないだろうか。
多摩高校と川和高校のどちらにするかで悩む受験生はいると思う。入試選考基準(内申比率・学力検査比率・特色検査比率)は、多摩が462型、川和が461型を採用。進学重点校8校の中で特色検査の比率が1なのは川和と小田原の2校のみ。
全県模試偏差値66で、内申124なら多摩、内申127以上なら川和か多摩か好きな方を選ぶ。