力学的エネルギーは、運動エネルギーと位置エネルギーを合わせたものである。
運動エネルギー 1/2mv^2
(m:質量、v:速さ)
重力による位置エネルギー mgh
(g:重力加速度、h:高さ)
弾性力による位置エネルギー 1/2kx^2
(k:ばね定数、x:伸び縮みの長さ)
微積分を使えば、運動方程式から運動エネルギーを導出できる。弾性力による位置エネルギーは、弾性力kxを空間積分した値である。
mghは、地球表面で重力加速度gが一定であること(実際には違う)を前提にした簡便式である。
ところで、エネルギーとは何か。これがよくわからない。高校物理では「仕事をする能力」という説明でひとまず満足することになる。
物体の中に何か実態のあるものが充填されているというイメージは大間違いなのである。
「よくわかる初等力学」(前野昌弘著)によれば、「系の状態量であって、仕事をすればするだけ減少し、仕事をされればされるだけ増加するような量を定めることが可能であった場合、その状態量を力学的エネルギーと呼ぶ。」と説明される。エネルギーは保存するように定義された物理量であって、実体的な量ではない。
物理学という壮大な思考体系の根本にある考え方のようである。
物理の「仕事」は、力をその働く経路に沿って積分(空間積分)することで求められる。微積分を使わない場合は、仕事=力×力の働く方向の変位(力を表すベクトルと変位ベクトルの内積)になる。
直感的にはわかる気がする。
重力や弾性力は保存力といい、保存力のする仕事は移動経路によらず、始めと終わりの位置だけで決まる。これに対して、移動経路によって仕事が変化する力を非保存力といい、動摩擦力や空気抵抗などが代表的である。
保存力であるための条件は何か。力Fが場所xの関数であることが必要条件になるが、これだけでは十分ではない。ベクトル解析や電磁気学の教科書に出てくるrot(回転)という概念が必要になり、rotF=0であればFは保存力になる。
rotはベクトルに作用するベクトル微分演算子である。
入門問題精講では、公式やPoint(ポイント)が次々と出てくるが、力学的エネルギーのところでは、以下に示す2つの公式が重要だと思う。
公式は等式、Pointは重要な知識・考え方
A:運動エネルギーと仕事の関係
物体の運動エネルギーの変化
=物体に働くすべての力による仕事
B:力学的エネルギーと仕事の関係
物体の力学的エネルギーの変化
=非保存力による仕事
保存力である重力・弾性力の影響を仕事で考えるのがA、位置エネルギーで考えるのがBになる。基礎問題精講でも上記のABが出てきて、必修基礎問はこれらを駆使することで解ける。
高校の物理の授業では、エネルギーとは何かについて、少なくとも1回分の授業の全て使って教えて欲しい。