データサイエンス学部の先駆けは滋賀大学と横浜市立大学
2017年に滋賀大学がデータサイエンス学部を創設したのが始まりである。それに続いて、2018年に横浜市立大学がデータサイエンス学部を新設した。
2023年はデータサイエンス学部の新設ラッシュ
2023年4月に17の大学でデータサイエンス学部が新設された。一橋大学は、72年ぶりに新設学部として「ソーシャル・データサイエンス学部」を開設した。AIを活用したビッグデータの分析により、情報の中に眠っている価値を発掘するニーズが増えていることが背景にある。この分野の人材が不足していることもあり、注目の学部になっていると言える。
データサイエンス学部の一般入試
一橋大学、横浜市立大学、滋賀大学の個別学力検査(ニ次試験)の科目を見ると、数学は数IA・数IIB(数IIIは必須ではない)なので、公立上位校で国公立大学文系コースの生徒なら対応できる。国公立大学理系コースの生徒はもちろん対応できる。
一橋大学
ソーシャル・データサイエンス学部
募集定員:
前期30、後期25
(学校推薦型選抜5)
大学入学共通テスト
配点240点。文系タイプ(地歴・公民2科目)、理系タイプ(理科2科目)いずれも選べる。
個別学力検査
国語100点(13.2%)/100分
数学330点(43.4%)/120分
英語230点(30.2%)/120分
総合100点(13.2%)/60分
計760点
大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の配点割合が24.0%と低く、二次試験が合否を左右する。試験科目の一つである「総合」は、「社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら試行する姿勢を確認するための科目」との説明がある。平たく言ってしまうと、図表を用いた思考力問題である。二次試験の数学の配点率が高いのが特徴的である(商学部の数学配点率は34.7%)。ただ、「総合」の配点率が13.2%(共通テストを含めると10.0%)に抑えられているので、従来の一橋大学受験生であれば、十分対応できるレベルであると思われる。
横浜市立大学
データサイエンス学部
募集定員:
前期40、後期5
(学校推薦型選抜10、総合型選抜5)
共通テスト
配点1,100点。文系タイプ(地歴・公民2科目)、理系タイプ(理科2科目)いずれも選べる。
個別学力検査
数学400点(44.4%)/120分
英語200点(22.2%)/90分
総合問題300点(33.3%)/90分
計1,000点
共通テストと二次試験の配点割合がほぼ半々である。試験科目の一つである「総合問題」は、「図表データ、文章等の情報を与え、それに基づいた論説能力を問う」との説明がある。二次試験の中で「総合問題」の配点割合は33.3%と高い。しかし、共通テストも含めると配点割合は14.3%なので、そこまで気にする必要はないように思われる。
滋賀大学
データサイエンス学部
募集定員:
前期50、後期20
(総合型選抜30)
共通テスト
配点900点。文系タイプ(地歴・公民2科目)、理系タイプ(理科2科目)いずれも選べる。
個別学力検査
数学200点(50%)/90分
英語200点(50%)/90分
計400点
共通テストの配点割合は69.2%と高い。二次試験では、「総合」に相当する科目はない。数学と英語で合否が決まる。
データサイエンス学部の受験
滋賀大学HP記載の情報によると、学部生の高校での専攻は理系7割、文系3割とのことである。国公立大学文系コースの高校生で、「数学が得意だから受験したら受かった。」みたいな感じだと、受かった後が大変そうである。また、国公立大学理系コースの高校生が個別学力検査に地理歴史がないのを良いことに受験するのもどうかと思う。
我が子がこの学部に関心を持つ場合、学校推薦型選抜あるいは総合型選抜から考えるようにアドバイスすると思う。
データサイエンス学部に感じる魅力と不安
データサイエンス学部は文理融合型の学部である。理系と文系の両方のバックグラウンドが求められる。課題解決型学修(PBL:Project-Based Learning)を行う場であり、学部時代から企業との連携プロジェクトもあって、非常に魅力的である。
我が子の将来の進学先としてこの学部を考えるとき、非常に悩む。社会のトレンドに合っているし、社会が求める人材になれる。しかし、データサイエンスの活用を実践的に学ぶ学部であって、データサイエンスそのものを学ぶ学部ではないと思う。
超高級な専門学校という感じがしないでもないのである。超高級な専門学校? 「上等じゃないか」とも思う。
AIに置き換えられる?
データサイエンティストが行うルーチンな部分は将来AIに置き換えられるという見方がある。しかし、これはどの職種にも共通することである。顧客のニーズを深く理解し、データサイエンスをどのように使えば高い付加価値を生み出すことができるのかを考えるのは人間の役割として残ると思う。