この本は、なんといってもタイトルに先ず惹かれる。著者は、法政大学名誉教授の陣内秀信氏である。都市学の分野で最も有名な先生ではないかと思う。ブラタモリにも何回か登場している。
個人的には、2005年7月に放送された「イタリア縦断1200キロ」(NHKの衛生ハイビジョン放送)で陣内先生を初めて知った。この年の8月に夫婦で8泊10日のイタリア旅行を予定していたのである。イタリア語を全く知らないのに自由旅行はハプニングの連続だった。陣内先生の「迷宮都市ヴェネツィアを歩く」を片手にヴェネツィアを歩き回っていたら、クレジットカードをいつの間にか盗まれてしまった。
東京は関東大震災(1923年)と東京大空襲(1944−1945)で二度も焦土と化し、戦後の高度成長期の破壊と改造により、古い建物が殆ど残っていない。しかし、東京が過去の顔を失ってしまったかといえばそんなことはなく、「・・・変化に富む立地条件と、その上に江戸以来つくられた都市の構造とが歴史的、伝統的な空間の骨格を根底において形づくっている・・・」と陣内先生は説くのである。
この本を片手に東京の街歩きをしないと、陣内先生が説く内容を深く理解するのは難しい。そういう楽しみが待っているとも言える。
法政大学デザイン工学部建築学科で陣内先生に出会い、充実した大学生活を送った学生は多いのではないかと思う。高校時代に陣内先生を知り、法政大学を目指したのならすごいが、恐らく大学に入って面白い先生がいることに気付いたのではないかと思う。
この瞬間にも面白い大学教授、面白い研究室は存在するはずである。少し背伸びして、自分が進もうと考えている分野の大学の先生の本を読んでみたい。
横浜国大都市科学部のオンラインキャンパスの動画を見た。この本のようなアプローチをすることもできるだろうし、都市に関する様々な課題を見つけて研究することができる。都市科学部を目指すなら、高校時代に「東京の空間人類学」を読んでおきたい。