電気通信大学は、理工学部に特化した国立大学である。東京農工大学と同じくらい地味なイメージがある。学部生の数は約3,300人と小規模である(農工大の方がわずかに大きい)。
しかし、京王線調布駅から徒歩5分のところにキャンパスがあり、この点は首都圏在住の高校生にとって魅力的である。
この大学にはどういう特徴があるのか?を探るとき、入試募集要項のアドミッション・ポリシーを読むのが手っ取り早い。電通大のキーワードは「総合コミュニケーション科学」だと思う。そして、情報系、理工系の融合領域における新しい価値の創造を志向していることが読み取れる。
情報理工学域
「学部」が存在しない。「情報理工学域」という大きな括りの下に情報系、融合系、理工系の3つの類があり、さらに専攻分野に相当するプログラムが設置されている。
I類(情報系)のプログラム
情報数理工学、コンピュータサイエンス、デザイン思考・データサイエンス、メディア情報学、経営・社会情報学
II類(融合系)のプログラム
セキュリティ情報学、情報通信工学、電子情報学、計測・制御システム、先端ロボティクス
III類(理工系)のプログラム
機械システム、電子工学、物理工学、光工学、化学生命工学
好きな教科をベースに考えると以下のようになる:
数学が好き
→I類(情報系)
II類(融合系)
物理が好き
→II類(融合系)
III類(理工系)
化学が好き
→化学生命工学
この大学は、数学と物理が好きな人が行く大学である。
募集人員
一般選抜(前期)354
一般選抜(後期)270
学校推薦型選抜 75
総合型選抜 21
計720
※総合型選抜(夜間主課程)を除く。
一般選抜(後期)の募集割合37.5%は、横浜国大(理工)や東京農工大(工)と同水準。総合型・学校推薦型選抜の割合は13.3%とやや低い。
一般選抜(前期)
大学入学共通テスト:
5教科7科目(配点450点)で、理科は、物理・化学・生物・地学から2科目を選択する。
個別学力検査:
数学200点(120分)
理科(物理・化学)150点(120分)
外国語(英語)100点(90分)
計450点
配点割合:
共通テスト50%、個別学力検査50%。
数学・物理をベースにした学部・学科の場合、個別学力検査の配点割合が高くなるパターンが多い。共通テストと個別学力検査の配点割合が同じなのは少し意外である。これには理由(狙い)がありそうだ。
数学33.3%、理科27.8%、英語22.2%、他(共通テスト文系科目)16.7%
数学が若干高く、理科が低い印象。
2023年度一般選抜(前期)結果:
合格者最低点/合格者平均点
I類 604.50/641.29
II類 586.00/619.10
III類 557.50/594.94
共通テストボーダー得点率(河合塾)はI類74%、II類73%、III類70%である。共通テスト得点率75%(337.5点)の受験生だと、個別学力検査で262.5点(58.3%)を取れば600点に到達する。英語で70点(70%)、理科で97.5点(65%)を取る前提だと、数学は95点(47.5%)でOKになる。
共通テスト得点率70%台半ばから後半の受験生は有利になる。一般選抜(前期)の共通テスト配点割合を50%と高く設定したのは、できるだけ多くの受験者を誘引する狙いがあると思われる。
一般選抜(後期)
共通テストの配点が450点→300点、個別学力検査の配点が450点→600点に変更となる。
共通テスト33.3%、個別学力検査66.7%となり、この方が本来的にはしっくりくる。
個別学力検査では、数学の試験時間が120分から150分に変更となり、数学と理科の配点が増えて合計600点になる。共通テストを含めた科目別の配点割合は、数学38.9%、理科33.3%、英語16.7%、他11.1%となる。
数学で合否が決まる。
学校推薦型選抜
(共通テスト利用なし)
11月上旬が募集期間で、11月後半に選抜が行われ、12月上旬合格発表の短期決戦型の日程である。共通テストが免除される代わりに総合問題が課される。また、理数分野のコンテスト等での受賞歴が求められる(必須ではないが、実質的な出願要件と考えた方が良い)。
募集人員:
I類26人、II類25人、III類24人の計75人。
I類のデザイン思考・データサイエンスプログラム(2023年4月新設)の募集5人は女子枠である。
出願・推薦要件:
- 評定平均4.0以上または数学及び理科の評点平均4.5以上
- 数III、物理、化学の履修(望ましい)
- 各高校2人まで(人数制限)
選抜方法:
総合問題(120分)、面接、提出書類(推薦書、志望理由書、調査書)及び科学技術コンテスト等での受賞歴を総合して合格者を決定する。
2023年度入試結果:
募集人員70人に対して121人が出願し、56人が合格。
理数分野のコンテスト等での受賞歴の有無がポイントになる。科学オリンピックであれば、地区予選である程度の成績を上げていればこの要件をクリアしているはずである(大阪大学や東北大学になると、本選での成績が求められると思う)。
総合型選抜
(共通テスト利用なし)
9月上旬が出願期間で、第2次選考が10月中旬にあり、11/1合格発表の短期決戦型の日程である。科学コンテスト等への参加(主体的な活動)やUECスクール(電通大が実施する高大接続教育)での積極的な活動が重視される。
募集人員:
I類7人、II類7人、III類7人の計21人。
出願要件:
必須のものはない。
選抜方法:
第1次選考は提出書類による。調査書で数学・理科の評点平均は見られるだろう。一番重要になるのは活動実績報告書(A4で3ページ)である。I類とII類は3分以内のPR動画を提出する。I類は制作物(プログラム等)が評価対象になる。II類は科学コンテスト等への参加実績と取得資格が評価対象になる。III類はPR動画までは求められない。
第2次選考は、活動実績報告書に関するプレゼンテーション(10分)とそれに対する質疑応答(20分)である。
2023年度入試結果:
募集人員21人に対して、志願者61人。第1次選考合格31人、最終合格11人。
最終合格者が募集人員の約半分とは厳しい。
まとめ
入試難易度としては、一般選抜(前期)が一番の狙い目で、次が学校推薦型選抜になる。総合型選抜は、科学コンテスト等での実績や電通大が実施するUECスクールに積極的に参加をしてきた高校生が対象になる。一般選抜(後期)については、数学が得意ならチャンスがあるように思う。