公立ルートを行く

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早慶附属高校を目指す背景(男子編)

 男子中学生の場合、女子と違って早慶附属高校の選択肢が多い。今回は、男子中学生が早慶附属高校を目指す背景について考えてみたい。

 

早慶に入るタイミング問題

 中学受験で早慶附属中学に入るのと、高校受験で早慶附属高校に入るのとでは、どちらの方が狙いやすいのか。ネット上でこのテーマをよく見かける。中学受験は地頭の良さが要求されるのに対して、高校受験は努力でカバーできるという意見もあった。しかし、親にはそれぞれ経済的な事情があり、子供によって成長曲線に違いがあるので、この議論を突き詰めようとしても意味がないと思う。

 

 公立高校は1校しか受験できないのに対して、早慶附属高校なら数校受験できるのは確かに魅力である。ただ、例えば慶應志木と慶應義塾では場所が違い過ぎて、第二希望の方に受かった場合はどうするのかと思ってしまうが、引っ越しするくらいの覚悟を持って早慶附属高校を目指しているのかもしれない。

 

 大学受験については、2016年度入試から始まった大学入試の定員管理厳格化*1の影響が大きい。一般入試で早慶に合格する難易度が上昇したからだ。そもそも、早慶に一般入試ルートで入学する学生の数は全体の5割を切っている。そうなると、大学入試ではなく、高校入試で早慶ブランドを確保しようということになる。

 

早慶ブランドの価値

 例えば、大手金融機関(銀行・証券・生損保)への就職を目指す場合、かつては早慶とMARCHの間に格差(あるいは学歴フィルター)は存在したと思うが、その差はまだあるのだろうか。早慶ブランド(文系)の価値(MARCHに対するプレミアム)はだいぶ下がっていると思う。

 

 他方、早慶ブランド(理系)の価値は高い。しかし、早慶附属高校の生徒が内部進学する学部として選ぶのは、世の中平均と同じ文系学部が中心になるようである。「もったいないなぁ」と思うのは自分だけか。しかし、考えてみれば、東大・東工大が第一希望で抑えの早慶(理系)に入ってくる学生と同じ土俵でやっていくことになるので、数学や物理などの科目に対して相当自信のある(そして理系科目が大好きである)生徒でないと、理系学部への内部進学を選ばないのだと思う。

 

公立トップ校進学との比較

 高校受験で早慶附属高校に合格できれば、高校3年間は高い学費(諸々450万円ぐらいか)を払うことになるが、大学受験の費用がかからない。早慶ブランドは確保できているし、子供は大学受験を考えずに楽しく高校生活を送ることができる。これが親の基本的な考え方であると思う。

 

 早慶附属高校に合格できる生徒は、学力的には神奈川県や東京都の公立トップ校に合格できる。もし、早慶附属高校と公立トップ校にW合格した場合、果たして公立トップ校から難関国公立大学に合格できるかどうかを考えるであろう。難関国公立大学に合格できるのは公立トップ校の10%〜20%(横浜翠嵐は別格で37%)なので、確率的には早慶附属高校進学が正解ということになる。

 

以下のブログを参照:

www.dtline2002.com

 

 この考え方は正しいのか、あるいはどこかが間違っているのか。結局、早慶ブランドを確保するか(学歴=利益を確定させるか)、リスクを取って難関国公立大学にチャレンジするか(オプションをキープするか)、学歴を巡る損得勘定の話になっているのである。まぁ、人生は損得勘定も必要といえば必要である。

 

早慶ブランド確保戦略は本当に得なのか

 文系の場合、東大は別格として、早慶と難関国公立大学との間に優劣はない。寧ろ、首都圏に住んでいる方が就職活動では有利だし、地方の旧帝に行く場合は生活費が余計にかかるので、早慶の方が総合的なコスパは良いのではないかと思う。従って、将来文系に進む場合には、早慶附属高校に進学して早慶ブランドを確保(学歴=利益を確定)する戦略は有効である。逸失利益は東大にチャレンジする権利ぐらいで、これは権利として持っていても、なかなか大変だ。

 

 しかし、AI時代が本格到来した今、基本的には理系に進みたいのである。将来理系に進みたい子供(とその親)が、大学入試で東大・東工大第一希望組との激戦を避けるために早慶附属高校を目指すのであれば、かなり合理的な考え方だと思う。しかし、理系に進みたいと考える子供や親は、少なくとも中学生の時期に「早慶ブランド」なるものにそれほど関心を持っていないと思うのである。

 

*1:大学の入学定員に対する入学率が一定の基準を超えた場合、補助金を減額する文部科学省の措置。2016年度入試から3カ年かけて段階的に基準が引き下げられた。学生が三大都市圏の大学に集中ことを是正する目的で導入されたものだが、2023年度入試から一部緩和された。