令和4年の大学進学率は過去最高の56.6%
少子化が進んでいるのに、なぜ大学生の数が過去最高水準にあるのか。これは、大学進学率の上昇によるもので、大学進学率(過年度卒を含む)は過去最高の56.6%に達している(令和4年度学校基本調査)。女性の大学進学率が上昇しており、令和5年度の速報値によれば、大学学部生に占める女子学部生の割合は過去最高の45.7%に達している。
最近、「2024年の大学入試改革」(著者は石川一郎氏)を読んで、大学入試制度の変遷と近未来がある程度わかるようになった。
2016年の大学入試の定員管理厳格化
なぜ、2016年にこの措置がなされたのか。実は、少子化の進展により、2009年頃から大学入学希望者が大学定員合計を下回る状況になったのだが、東京・大阪・名古屋の三大都市圏とそれ以外の地域の間の格差が拡大し、三大都市圏の大学では入学定員超過が起きていた。その構図がはっきりと認識されたのが2014年入試であった。2016年の大学入試の定員管理厳格化は、地域格差是正を目的として導入されたのである。
大学入試定員厳格化とは:
大学の入学定員に対する入学率が一定の基準を超えた場合、補助金を減額する文部科学省の措置。2016年入試から3カ年かけて段階的に基準が引き下げられた。学生が三大都市圏の大学に集中することを是正する目的で導入されたものだが、2023年入試から一部緩和された。
AO入試・指定校推薦枠の拡大による受験生の早期取り込み
私立大学は、一般入試での大学定員数を減らし、AO入試・指定校推薦枠の拡大により、受験生を早期に(年内に)取り込むようになった。これによって、一般入試を受けて大学に入学する学生の割合が低下していったのである。
総合型選抜、学校推薦型選抜への移行:
2021年入試より、AO入試は総合型選抜、指定校推薦・公募推薦は学校推薦型選抜に改名した。
2020年の学習指導要領改定
学校教育の方針を示す学習指導要領は10年に一回改定される。2020年に改定された新学習指導要領では、以下の3つの資質・能力を育成し、子供たちに生きる力を身につけさせることが教育の柱に位置付けられた。
・実際の社会や生活の中で生きて働く「知識及び技能」
・未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」
・学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」
これは、現在の中学校の内申を決める3つの観点そのものなので、中学生と親には馴染みのあるものである。
新学習指導要領は、2020年から小学校、2021年から中学校、2022年から高校で実施された。現在の中学3年生は、新学習指導要領の中で3年間を過ごす最初の世代である。
2021年1月に大学入学共通テストがスタート
旧大学入試センター試験に代わる大学入学共通テストが2021年1月からスタートした。これにより、従来の知識重視型の入試から、思考力・判断力・表現力を問う入試に代わったのである。
大学入学共通テストは、2025年1月より新学習指導要領が完全に反映されたものにヴァージョンアップする。
大改革に立ち向かっていくか、リスク回避でいくか
現在の高校2年生は、2025年1月にヴァージョンアップする大学入学共通テストを初めて受ける学年になる。過去問が当てにならないということである。この大改革に立ち向かっていくか、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧指定校推薦)で一般入試を回避するか、決断が迫られる。「子供はまだ中学生だから良かった〜」では高校生の親に怒られそうである。
大学入試の二極化の行方
現在の大学入試は、大学入学共通テストを受けて国公立・私立大学に進学するグループと、大学入学共通テストを受けずに総合型選抜・学校推薦型選抜(総称して年内入試)を受けて私立大学に進学するグループに大きく二極化している。しかし、国公立大学においても、総合型選抜・学校推薦型選抜の割合はそれなりに高くなってきている。
今後、大学進学率の向上(そろそろ頭打ちか)よりも少子化の影響の方が強く出るので、大学生の数は減り始める。どこで減るかと言えば、私立大学の学生である。過去10年程度は二極化が進展してきたのだが、流れが変わりそうである。国公立大学入試については、大学入学共通テストを含んだ総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が増えると予想する。私立大学は淘汰の時代に入る。私立大学は生き残りをかけてどうするだろうか。
繰り返すが、国公立大学でも総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が上昇していくことが予想される。これは、公立中学校から公立高校に進学する生徒が国公立大学に進むチャンスが増えることを意味すると思う。