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日比谷高校の志願者減少と高校授業料無償化

 日比谷高校の2024年度入試の志願者数が459人となり、前年度の581人から122人減少した。最終的には354人(前年度は474人)が受験して268人が合格したが、辞退者18人で定員割れとなり(募集人員253人)、5年ぶりに二次募集を実施する(といっても募集人員は2人なので、猛烈な倍率になる見込み)。

 

 東京都が2024年4月から実施する高校授業料無償化の影響を受けたとの見方が多いようだ。日比谷高校を目指す受験生は、開成や早慶附属などの難関私立高校を併願する。高校授業料無償化により、私立高校に進学する場合の3年間の学費が軽減されるので、日比谷高校の受験をやめてしまう受験生が増えたのではないかという分析である。

 

 日比谷高校と難関私立高校を併願する受験生の世帯は経済的には恵まれていそうなので、高校授業料無償化にそれほど反応しないように思うのだが、これだけの影響が出たのである。

 

 日比谷高校以外の進学指導重点校には大きな影響がなかったことは興味深い。日比谷高校という高い山を目指すとき、リスクが高いので難関私立高校も本気で狙う。そうこうしているうちに、日比谷高校に行きたいのか、難関私立高校(特に早慶附属高校)に行きたいのか、わからなくなってしまう受験生がいるように思う。

 

高校授業料(実質)無償化

 東京都が高校授業料無償化を行う最大の理由は、都立高校の定員キャパシティが小さいからだと思う。東京都の学校基本統計(令和5年)によると、都内の高校生は約30万人で、都立高校の生徒数は12.4万人(41%)である。神奈川県の高校生は約19万人で、公立高校の生徒数は12.2万人(64%)である。大阪府の数字を調べれば、東京都と同じように公立高校の生徒数の割合が低いはずである。

 

 つまり、東京都の場合、都立高校の定員キャパシティが小さいため、都立高校に行きたくても行けない生徒が出てきてしまう。都立高校に行けずに私立高校に進学する生徒がいる世帯を資金面で支援しましょう、という考え方が根本にある。

 

 しかし、東京都の高校授業料無償化は、難関私立高校に進学する都内在住の生徒がいる世帯も対象になる。

 

 高校授業料無償化は、第1希望の都立高校に合格できず、私立高校に進学する生徒がいる世帯のみを対象にすべき制度であるように思う。特に、大学附属高校の授業料無償化はおかしい。大学入試のリスクを回避するために、プレミアムを支払って大学附属高校に進学する側面があるわけだから。

 

来年はどうなる?

 日比谷高校は、今年の反動で受験者数は増えると予想する。

 神奈川県に高校授業料無償化は導入されるか? これは微妙である。公立高校の定員キャパシティがそれなりに大きいし、都知事選に比べて神奈川県知事選は楽そうだから(黒岩知事は憎めないキャラだけどね)。しかし、昔と違って入試のウエイトが高くなったので、公立高校が絶対的な第1希望であっても、残念な結果になる受験生は多い。神奈川県にも高校授業料無償化(公立高校第1希望が条件)を導入して欲しい。