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コーポレートガバナンス・コードが会社と人材を変える

コーポレートガバナンス・コードとは何か

 コーポレートガバナンス(企業統治)は、会社の意思決定の仕組みを指す。コーポレートガバナンス・コード(以下、CGC)は、上場企業の意思決定の仕組みに関する指針(これに従って意思決定の仕組みを構築しなさいということ)であり、その目的は、会社の持続的な成長と中長期的な価値の向上を図ることである。CGCは、実は投資家(株主)を保護する目的で生まれたものだ。2021年6月に2回目の改訂(東京証券取引所による)が行われた。重要な改訂内容は以下のとおりである:

 

①取締役会の機能発揮
②企業の中核人材の多様性の確保
③サステイナビリティ*1を巡る
 課題への取り組み

④その他(独立社外取締役の割合など)

 

企業の中核人材の多様性の確保

 多様性の確保とは、女性、外国人、中途採用者を増やしなさいということである。そして、上場企業は測定可能な自主目標を定めて継続的に公表していかなければならない。これまでのような(同じ会社でずっと一緒にやってきた日本人だけの)男性中心の会社運営では、会社の持続的な成長と中長期的な価値の向上を図ることができないという共通認識が背景にある。21世紀に女性は躍進する。転職は常識になる。海外赴任などしなくても、会社で外国人と普通にコミュニケーションするようになる。

 

サステイナビリティを巡る課題への取り組み

 上場企業は、自社の活動を通じて排出される二酸化炭素(CO2)の排出量を算定し、具体的に削減していかなければならなくなる。CO2の排出量算定については、3段階のステップがある:

Scope 1 
自社によるCO2排出量

Scope 2 
外部調達エネルギーの使用によるCO2排出量

Scope 3
自社のサプライチェーン*2全体でのCO2排出量

 

 Scope 1 & 2だけであれば、プライム市場*3の上場企業だけの話になるが、Scope 3が義務付けられると、上場企業と取引する中小企業までがCO2排出量計算の対象に入ってくる。早ければ、2025年頃から適用開始となる見込みである。

 

 2020年10月に、日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言した。カーボンニュートラルとは、以下のことである:

 

人為的なCO2排出量 
 = 人為的なCO2吸収量

 

 この目標を考えたら、Scope 3の適用など、当たり前の話である。

 

求められる人材が変わる

 上場企業の最高財務責任者(CFO)は、国際会計のことがわかっていれば任務を全うできるというわけにはいかなくなってきた。自社のサスティナビリティを巡る課題への取り組みを投資家に説明し、自社の企業価値を高めていかなかければならない。社内において、投資家に話す原稿が出来上がるのを待っていれば良いということではない。全社横断のワーキングチームの中で主導的な役割を果たしていくことが求められるのではないか。

 

 投資家についても、企業の財務諸表の分析と収益予想に基づく株価算定をしていれば良いというわけにはいかなくなってきた。企業が公表するサスティナビリティを巡る課題への取り組みなどを理解し評価しなければならないのである。

 

日本の会社の仕組みと人材は大きく変わるだろう

 私は、コーポレートガバナンス・コードはこれから10年ぐらいの間に、日本の会社の仕組みを想像以上に大きく変えるのではないかと期待している。会社の仕組みを変えるために、先に人材が変わると思う。新しい状況に適応できる人材が求められるのである。

 

 CGCは東証が定めているが、背景にあるのは投資家からの要請である。現在の国内株式市場を動かしているのは海外投資家である。CGCは外圧によって生まれたという見方もできる。投資家というと、金儲けだけの悪い人達のイメージがないわけではないが、時にはすごく良いことをしてくれるのである。

 

*1:持続可能性を意味する。

*2:原材料・部品の調達から製品製造、販売・流通までのプロセス全体を表す用語。

*3:2022年4月に東京証券取引所の市場区分が見直され、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編された。プライム市場は最上位の市場であり、高い次元のコーポレートガバナンスが求められる。