三菱UFJ銀行の2018年から2022年にかけての採用人数は、1,023名→959名→514名→370名→380名である(マイナビ2024に開示されている数値)。直近では増加したようだが、採用を強化しているIT・データ分析・金融工学などの分野に強い人材の増分であろう。過去5年のスパンで見た時、文系学部生の採用数は大きく減少している。
銀行は、今後のビジネス展開において、文系出身者をあまり必要としていないのである。
リアル店舗からネットバンキングへのシフト
銀行は、リアル店舗でのサービスからネットバンキングによるサービスに移行しており、既存の店舗の統廃合を進めている。コスト削減と顧客ニーズへの対応が理由である。この流れで需要が増えるのは、ITに強い人材である。
国内での貸付事業は縮小していく
日本は、2008年をピークに人口減少に転じている。2022年の人口減少は55万人(中規模都市が一つ消滅したことになる)で、人口減少はこれから加速する。日本の潜在成長率は現在1%前後の水準を保っているが、人口減少をカバーできるのだろうか。銀行員というと、将来性のある会社に融資してその会社の成長を支援するようなイメージであったが、それは過去のものになりつつある。
AIが企業を審査する
AIが大量のデータに基づいて企業を審査し格付けする時代が来ている。人間が行うのは、AI審査のシステムを構築することと、定期的にシステムをチェックし改善していくことである。この流れで需要が増えるのは、AI活用のできる人材である。
資産運用サービスに活路を求めている
預金を集めて企業や個人事業主に融資する。この預貸ビジネスでは稼げなくなってきたため、銀行は資産運用サービスの拡大に活路を求めている。この流れで需要が増えるのは、金融工学に強い人材である。
文系出身の銀行員はもはや主役ではない
銀行は、文系学部生が目指す就職先としてこれまでメジャーな存在であった。しかし、銀行の中で、文系出身者が主役であった時代は過去のものになりつつある。文系学部生が銀行に入ることができたとしても、エキサイティングな仕事が待っているわけではない。これからは、AI活用やDX推進に関わる人材が銀行の中で主役になる。
迷ったら文系ではなく理系を選ぶ時代がきている
公立高校では、高2で文系・理系に別れるのが一般的だが、その決断は高1の秋であろうか。迷うくらいなら文系と言われていたが、迷うなら理系を選ぶ時代が来ていると思う。
補考:銀行の営業について
銀行くらい、似たり寄ったりの商品・サービスを取り扱っている業界はないのではないだろうか。定期預金の利率、住宅ローンの金利、投資運用商品など、比べて見ればわかる。大した違いはないはずである。差別化されていない商品・サービスを取り扱う営業担当者は辛いと思う。それでも営業成績には差が出る。顧客のニーズをよく理解して、最適なタイミングで情報提供する能力は、営業担当者によってかなり違うからである。でも、営業担当者になるなら、魅力のある商品・サービスを自信を持ってセールスする方が楽しいのではないかと思う。