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一浪(浪人)のコスパをどう考えるか

 高校生の大学浪人率(全体平均)は20%程度と推計されており、一昔前よりも低下しているようだ。少子化、大学入試制度の多様化、経済環境の変化などが関係しているとされる。今回は、一浪することの経済的なコストとベネフィット(コスパ)について考えたい。

 

一浪の経済的コスト

 一浪の経済的コストには、親が負担する分と本人が負担する分がある。

①親の負担:
 浪人中の受験費用と子供の生活費

②本人の負担:
 働く期間が1年短くなることで失う
 将来所得
  

①親が負担するコスト150万円
 (予備校費用100万円、子供の生活費50万円)

 予備校費用がかかる。浪人中の子供の生活費(食費、交通費、小遣いなど)もかかる。150万円というのは、ざっくりとした数字である。

 

②本人が負担する将来コスト500万円

 働く期間が1年短くなると仮定し、大卒者の平均年収(税込600万円台)を勘案して500万円とした。従来型雇用制度の骨格をなしている退職金や役職定年、年金への影響まで考慮すると、将来コストはもう少し大きい。このコストは将来発生するため、一浪する時点ではあまり大きく感じられない。

 

一浪の経済的ベネフィット

 一浪することで合格できる大学のレベルが上がる結果、良い会社等に就職して生涯年収が増える分を経済的ベネフィットと考えるのが一般的かと思う。

 

 恐らく、一浪することで難関国公立大学*1までレベルを上げられないと、一浪の経済的コストを確実に上回る経済的ベネフィットを得られないのではないかと思う。時代は変わってきていて、例えば早慶とMARCH(いずれも文系)の学歴差による経済的便益の差などはほぼ無くなっている(時流に遅れている会社だとまだ差が残っているかもしれない)。神奈川県の公立上位校の浪人率を推計してみると、湘南と横浜翠嵐の2校が浪人率トップ2である。この2校の生徒が浪人してまで狙う大学は難関国公立大学しかあり得ない。

 

神奈川県公立上位校の浪人率
(2022年3月)

 湘南 28.6%
 横浜翠嵐 24.5%
 横須賀 21.5%
 柏陽 19.5%
 平塚江南 15.5%
 横浜緑ケ丘 14.7%
 鎌倉 14.1%
 川和 13.7%
 小田原 12.5%
 厚木 12.3%
 光陵 12.1%
 希望ケ丘 10.9%
 多摩 9.2%
 横浜平沼 8.9%
 大和 7.9%
 相模原 6.9%
 茅ケ崎北陵 6.3%

 2024年度用「神奈川県高校受験案内」(声の教育社)の卒業後の進路の欄に記載の数値を使って以下の算式により推計した。各校同じ条件で計算しているので、相対比較にはなるはずである。

 進学準備ほかの人数 ÷ 卒業生数

 

社会人になるのが1年遅れることの経済的コストは下がってきている

 企業の雇用制度は大きく変わってきている。また、一生同じ会社で働くつもりの人も減ってきている。人口減少の問題により、働く期間は自分の意思で長くできるようになるだろう。そうすると、社会人になるのが1年遅れることの経済的なコストは実は下がってきているように思う。

 

 一浪という形で時間を使うだけでなく、高校時代に1年留学して4年で卒業するとか、大学在学中あるいは大学卒業後に1年留学あるいは長い旅をしてから社会人になるとか、そういう1年の使い方も「あり」の時代が来ていると思う。但し、親が負担する経済的コストは減らないので大変である。

 

*1:東大、東工大、一橋大、旧帝、筑波大、国公立大学医学部を指す。