押してもなかなか動かなかった物が動き始めると軽く感じるが、これは静止している時の摩擦力の方が動き出した後の摩擦力よりも大きいから、というのは一般知識としてなんとなくわかる。(静止摩擦力は外力に応じて比例的に増していく)
動き出す直前の摩擦力が最大静止摩擦力fで、以下の式が成り立つ。
最大摩擦力f=最大静止摩擦係数μ
×垂直抗力N
最大摩擦力と垂直抗力が比例関係にあるということは、この2つの力は兄弟か親戚ということになる。
垂直抗力とはそもそも何か。これが難しい。高校物理の授業ではこの問題に深く入っていかないのではないかと思う。
「よくわかる初等力学」(前野昌弘著)では、原子一個一個に四方八方に向いたバネが付いていて(実際にバネが付いているわけではない)、重力がある時は原子の上に付いているバネよりも下に付いているバネの方が縮みが大きい。この原子に付いているバネが出している力こそが「垂直抗力」であると説明される。
「高校物理再入門」(吉田伸夫著)では、垂直抗力や摩擦力は電子・原子核システムの電気的な力から生まれると説明される。どうやらバネが出している力の正体は電磁気力のようである。物体の表面で電磁気力が働いた結果が垂直抗力ということになる(と思う)。
こんなことを考えたり知ったところで、物理のテストで良い点が取れるわけではない。しかし、公式を覚えて問題を解くだけでは、物理の面白さはわからないのではないだろうか。垂直抗力のことだけで60分間話をしてくれるような物理の先生に出会いたい。