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「大学入試問題で読み解く「超」世界史・日本史」を読む

 この本をずっと読まずに本箱の中に眠らせていた。

 

 ある時から週刊新潮の巻頭コラムを読むようになり、博覧強記の書き手の振れ幅の大きいストーリーに魅せられるようになった。書き手は片山杜秀氏で、慶應義塾大学法学部教授(専門は政治思想史)である。そして、表題の本は片山教授の著作であることに後になって気付いた次第である。

 振れ幅の大きいストーリーと表現したが、どうもしっくりこない。今を生きる我々の身の回りのある事象と歴史上のある事象を結びつける手腕がすごいと思う時をもあるし、話の展開はこれだけではないので、面白さを簡単に表現できない。

 

 この本は、当然ながら、今読むと非常に面白い。東大、一橋大、慶應大の世界史・日本史の入試問題(記述問題)を取り上げ、入試問題が対象にしている歴史事象を解説しながら最後に模範解答を示すスタイルで進んでいく。印象的な問題(題材)を3つ示す。

 

 オランダ400年史から近代が見える
 二つの中心を持つ中国
 日本はなぜ中国大陸で失敗したのか

 

 実は、この本はどちらかと言うと大人が読む本である。後書きに書かれているが、「この国の政治や経済や社会のよさや悪さ、世界情勢の複雑怪奇さを受験生時代よりもはるかに実感できるようになって、どうしてそうなっているのかを理解したくなってきたとき、はじめて歴史を自らの欲求として学びたくなるものではないですか」とある。

 

 この本で取り上げた重量級の入試問題に対応するためには、高校時代に大変な量の学習が必要になる。片山教授によれば、そこで燃え尽きてしまう学生がいるようである。

 

 片山教授は小・中・高一貫教育の私立校で12年間を過ごし、小学校受験しか経験していない。中学高校を通じて歴史は趣味であり、いわゆる指定校推薦で慶應大学に進学したそうだ。

 

 本当の学習は大学入学後に始まるので、大学受験で燃え尽きてしまったら、とても残念なことだと思う。

 

 片山教授のように歴史の時空間を自由に行き来できたら、本当に楽しいだろうなと思う。子供(娘)には、高1で「歴史総合」を学んでいるうちにこの本を勧めてみたい。