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高1で知る!東北大学のAO入試II期(共通テストなし)

 東北大学は、THE日本大学ランキング(Times Higher Education)で第1位(4年連続)に選出されている。また、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドで、2023年9月に支援第1号に選ばれている。まさに日本トップレベルの研究大学である。そして、全募集人員に占める総合型選抜等の募集人員の割合が31.6%(2023年度入試結果)と国公立大学で第1位を誇る。

 

 今回と次回の2回にわたって、東北大学の総合型選抜の概要を見ていきたい。

 

募集人員(2024年度入試)

一般選抜(前期)1,599
一般選抜(後期)90
AO入試 II期 282
AO入試 III期 377
特別選抜 若干名
 計2,348

 

 AO入試(総合型選抜)の全募集人員に占める割合は28.1%で、大学案内に記されているAO入試等の割合31.6%と差異がある。後者の数値には、科学オリンピック入試や国際バカロレア入試等による入学者が含まれているのかもしれない。

 

入試倍率(2023年度入試)

一般選抜(前期)2.6倍
一般選抜(後期)11.2倍
AO入試 II期 3.8倍
AO入試 III期 2.8倍

 AO入試 II期は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)を課さないタイプの総合型選抜で、AO入試 III期は共通テストを課すタイプの総合型選抜である。AO入試 II期は年内に実施されるので、人気が高くなるのはわかる。一般選抜(前期)とAO入試 III期の入試倍率がほぼ等しいのは、入試難易度の調整がうまく行われていることを示しているように思う。

 東北大学のAO入試は、「学力重視のAO入試」(学校案内に記載)であり、東北大学第一志望の受験生に複数回のチャンスを与える仕組みである。

 「やっぱり学力重視か。な〜んだ」と言ってはいけない。一般選抜、AO入試 II期、AO入試 III期のうち、自分の強みを一番発揮できる入試制度がどれなのかは、よく見ないとわからない。

 

ここからは、理学部と工学部に絞って、先ずは一般選抜の特徴を見る。

一般選抜(前期)の特徴
(2023年度入試)

共通テスト合格者平均

理学部 80.7%
工学部 80.0%

 ボーダー得点率(河合塾)は、理学部が76〜79%、工学部が77〜78%である。

 

配点割合

共通:共通テスト
個別:個別学力検査

理学部 共通36% 個別64%
工学部 共通36% 個別64%

※東工大の場合、共通テスト成績は第2次試験にキャリーされない(完全にリセットされる)。筑波大(総合選抜理系)の場合、共通37.5%、個別62.5%である。

 

いよいよ、AO入試 II期の概要を見る。

AO入試 II
(共通テストを課さない)

日程:
出願期間 10月13日〜19日
第1次選考 11月4日
同結果発表 11月10日
第2次選考 11月18日
合格者発表 11月24日

 2023年度入試は終了。

 

出願要件:

  • 調査書の学習成績概評A段階に属する者。
  • 合格した場合に入学することを確約できる者。

 評点平均4.3以上が必要。

 

出願書類:

入学志願書
志願理由書
活動報告書(理学部は不要)
英語の資格・検定試験の成績証明書等
調査書
志願者評定書

 志願者評定書は学校長名による書類である。①志願者が人物的に優れていること、②十分な学力を有すること、③志願する分野の学問に深い関心を持ち、それを学んでさらにその研究を推進する意欲と能力を有すること、を保証する内容になる。

 これがないと、志願者数がコントロールできなくなる。

 

<理学部>

第1次選考:

 筆記試験(200点)が課される。

 筆記試験では、志願する系に関する関心度・知識及び論理的思考力・理解力・文章表現力等の能力が評価される。

 第1次選考では、出願書類が評価対象にならない。これは意外だ。

 

第2次選考:

 第1次選考合格者に対して面接が課される。(第1次選考での)筆記試験(200点)、面接(100点)により合格者を決定する。尚、出願書類の評価は面接点に含まれる。

 面接試験では、学習意欲、論理性・独創性・好奇心及び理学的センス・英語で話すための基礎的な能力などが評価される。出願書類では、高校での科目成績や資格(英語の資格・検定試験など)が評価される。

 

<工学部>

第1次選考:

 筆記試験(300点)、出願書類(150点)による選考である。

 筆記試験では、英文読解力や作文能力、数理的思考力、物質などに関わる自然科学分野の基礎的理解度や論理的思考力等が評価される。

 出願書類については、高校での教科成績、学校内外の様々な学習成果や活動実績のほか、資格等が評価される。

 資格等の範囲は広い。語学等の資格・検定試験、科学オリンピック、生徒会活動、クラブ活動、各種大会・コンテストやコンクール、ボランティア活動、留学経験等が例として挙げられている。

 

第2次選考:

 第1次選考合格者に対して面接が課される。筆記試験(300点)、出願書類(150点)、面接(150点)により合格者を決定する。

 面接試験では、志願学科に関わる科学技術についての知識、コミュニケーション能力、独創性やひらめき、学問や研究に対する熱意や積極性、視野の広さや倫理観などが評価される。

 

2023年入試結果:

理学部
 募集人員41人に対して、志願者143人。第1次選考合格者69人、第2次選考合格者34人。

 

工学部
 募集人員112人に対して、志願者379人。第1次選考合格者215人、第2次選考合格者112人。

 

 第2次選考で約半数が落とされるが、面接の配点割合を見ると、理学部が33.3%、工学部が25.0%なので、結局のところ、第1次選考での順位が大きいと思う。工学部は、出願書類の配点割合が25%もあるので、高校での活動実績も重要なポイントになる。

 東北大学が(絶対的な)第1志望なら、11月下旬には決着がつくので、第1ラウンドとして受ける方が得である。ただ、評価のポイントがどこかを考えた時、一般選抜との明確な違いは見えない(違いはないのかもしれない)。同大学の受験チャンスが単純に増えるという捉え方が正しいように思う。

 次回はAO入試 III 期の概要を見る。