東京工業大学(以下、東工大)は、令和6年度入試から「女子枠」を設置する。
女子枠設置の狙い
同大学の「令和6年度学校推薦型選抜(理学院、生命理工学院)学生募集要項」の中に、「女子枠設置に託した思い」と題した説明がなされている。一番重要と思われる箇所を以下抜粋する:
「日本は今後、高齢社会、地球温暖化、環境問題等による社会の急速な変容や、多くの課題に直面すると予想されます。その時代には科学技術の重要性が、現在よりも一層高まることは明白です。これらの課題を解決し、日本社会、さらには世界が持続的に発展し続けるためには、今まで以上に多様な視点をもった広い分野の専門家がその力を結集すること、すなわちダイバーシティ&インクルージョンが必要不可欠です。」
ダイバーシティ&インクルージョンとは、以下を指す(抜粋):
「個々人が持つ外的(性別、人種、年齢等)、内的(ライフスタイル、価値観等)な違いにかかわらず、それぞれの個を尊重し、多様性を認め合い、良いところを受け入れて生かすこと」
これからの社会は「ダイバーシティ」を求めている。以下の記事を参照:
コーポレートガバナンス・コードが会社と人材を変える - 公立ルートを行く
学校推薦型選抜の概要
募集定員:
生命理工学院15人。
※女子枠と一般枠との併願可能。一般選抜との併願もOK。
日程:
出願期間:12月18日〜12月20日
合格者発表日:2月13日
※大学入学共通テストを受ける。
推薦要件:
以下の全てに該当し、学校長が責任をもって推薦でき、合格した場合には必ず入学することを確約できる者:
- 生命理工学院に対する明確な志望理由と学修の熱意を有し、学習成績・人物ともに特に優れる者
- 数IA、数IIB、数IIIを全て履修している者(簡略記載した)
- 生物、物理、化学のうち、2科目以上を履修している者(同上)
出願書類:
①調査書
②推薦書及び記載要件
学年全体での成績順位。
志願者が推薦に相応しい理由。また、以下の特記事項があれば記載:
- 正規の授業科目の一環として実施した課題研究(理学及びそれに関連した内容に限る)で主導的な役割を果たし、優れた成果を挙げてそれを取りまとめて発表した者
- 課外活動において実施した研究(数学・理科に関連した内容に限る)で主導的な役割を果たし、優れた成果を挙げ、それをとりまとめて校外の参加者を含む学校内外で発表したことを客観的に示す資料を提出できる者
- 国際科学オリンピック等に日本代表として出場した者、又は国際科学オリンピックの国内予選に相当する地区大会等で優秀な成績を収めた者
※これが「実質的な出願要件」と言えそうである。SSH指定校で、自らがリーダーとなった課題研究があれば、一番目の特記事項に該当するのではないか。
③志望理由書
推薦書に研究に関する記載がある場合は、志望者本人が研究内容を記載。
④学修計画書
目指すキャリアと入学後に身に付けたい学修内容を記載。
選抜方法
個別学力検査は免除。大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の成績、推薦書、調査書、志望理由書及び学修計画書の内容を総合的に評価し、合格者を決定。
※ここが決定的に違うポイントである。東工大の一般選抜では、共通テスト成績は第1段階選抜でのみ使われる(第2段階選抜へはキャリーされない)。学校推薦型選抜では、共通テスト成績が評価の対象になる。
共通テストの科目と配点
国語200点
地理歴史・公民1科目 100点
数学2科目200点
(数IA、数IIB)
理科2科目200点
(化学・物理・生物・地学から2科目)
外国語200点
計900点
※東工大の一般選抜では、個別学力検査で物理の試験を必ず受けなければならない。学校推薦型選抜では、共通テストしか受けないので、物理ではなく生物を選べる。
合格難易度は?
2024年入試が初めてなので、誰も予想できない。生命理工学院の共通テストのボーダー特定率は79%(河合塾)であるが、これは一般選抜(前期)の場合である。推薦書の特記事項の内容にもよるが、85%程度は取る必要があるのではないだろうか。
推薦書のウェイトが大きそうだ(学校推薦型選抜だから当然か)。学年全体の順位を具体的に示すようにと指示されているので、学年20番以内には入っていたい。SSH指定校で主導的な役割を発揮した経験があるか、国際科学オリンピック(国内予選を含む)で活躍したか、いずれかに該当することが「実質的な出願要件」だ。
調査書については、評定平均4.3以上、数学・化学・物理(生物)は5が必要だろう。英検準1級は持っていたい。
最後は、志望理由書と学修計画書の内容になる。どちらの生徒を選ぶか接戦になった時の決め手になるのがこれだろう。
要求されるものはハイレベルだが、総合力で勝負するタイプの女子なら、学校推薦型選抜が向いているように思う。チャンス到来と考えたい。