横浜国立大学理工学部の特徴は何だろうか。例のごとく、入試募集要項のアドミッション・ポリシーを読んだが、ピンとくる部分はなかった。唯一、総合型選抜を実施する「海洋空間のシステムデザイン教育プログラム」は別格で、「環境と調和しつつ世界中を駆けめぐる“未来型の船舶や航空機”、世界中に潜在する海洋エネルギーや海底資源の利用を促進するための“斬新な海洋構造物”の設計エンジニアになりたい人」が求める学生像と記載されており、魅力を感じる。
理工学部の学科・教育プログラム(EP)
機械・材料・海洋系学科
機械工学EP
材料工学EP
海洋空間のシステムデザインEP
化学・生命系学科
化学EP
化学応用EP
バイオEP
数学・電子情報系学科
数理科学EP
物理工学EP
電子情報システムEP
情報工学EP
得意な(好きな)教科をベースに考えると、以下のようになる:
数学が好き
→数学・電子情報系学科
物理が好き
→機械・材料・海洋系学科
化学が好き
→化学・生命系学科
募集人員
一般選抜(前期)350
一般選抜(後期)252
総合型選抜 18
学校推薦型選抜 33
計653
上記以外に、私費留学生外国人入試あり(6人募集)。
一般選抜(後期)の募集割合は38.6%で、電通大(37.5%)、東京農工大工学部(35.9%)と同水準である。総合型選抜・学校推薦型選抜の募集割合は7.8%と非常に低い。これには理由があって、実施するEPが少ないのである(後述する)。
一般選抜(前期)
大学入学共通テスト:
5教科7科目(配点900点)。理科については、機械・材料・海洋系学科と数学・電子情報系学科は、物理と化学の2科目を選択。化学・生命系学科は、物理・化学・生物から2科目を選べるが、個別学力検査で生物を選択できるのはバイオEPのみ(化学EPと化学応用EPは物理と化学)。
個別学力検査:
数学(150分)450点
理科(150分)450点
英語(90分)300点
計1,200点
数学の試験時間150分は長い(東北大や名古屋大などの難関国立大学と同じ)。
理科の試験時間150分は、千葉大(機械工学コース130分)より長く、東京農工大(160分)とほぼ同じ。
英語の試験時間90分は標準的。
配点割合:
共通テスト42.9%、個別学力検査57.1%
共通テストの配点割合は、電通大と東京農工大(50%)よりは低いが、千葉大工学部(25%)よりは高い。
科目別では、数学30.9%、理科30.9%、英語(外国語)23.8%で、標準的である。
一般選抜(後期)
個別学力検査の試験科目が数学と理科のみになり、個別学力検査の配点割合が58.0%と高くなる。また、数学と理科の配点割合がそれぞれ35.5%(合計71%)と高くなる。
総合型選抜
募集人員:
材料工学EPと海洋空間のシステムデザインEPのみが実施する。募集人員の全体に占める割合は、材料工学EP19.0%、海洋空間のシステムデザインEP28.6%と高い。
日程:
9月前半が出願期間、10月中旬に第1次選抜合格者発表、11月下旬に第2次選抜、12月中旬に第2次選抜合格者発表、年明けに共通テストを受けて、2/13に最終合格者発表。
短期決戦型の日程になっておらず、共通テストの利用目的が限定されていないので、入試制度としてはあまりよろしくない評価になる。2/13に不合格になったときの精神的ダメージが心配になる。
選抜方法:
<材料工学EP>
第1次選抜は自己推薦書(600字)と調査書により行われる。第2次選抜は面接試験(数学・物理・化学の能力を評価)である。第2次選抜合格者を対象にして、共通テスト(数学・理科・外国語の3教科でそれぞれ200点の計600点)の成績により最終合格者を決定する。
文系科目が苦手で理数科目が得意な受験生に向いている。ただ、数学・物理が超得意な生徒は機械工学、電子工学、情報工学に行くと思うので、化学がポイントになるように思う。
<海洋空間のシステムデザインEP>
第1次選抜は自己推薦書(1,000字)と調査書により行われる。第2次選抜は面接試験(数学・物理の能力を評価)である。第2次選抜合格者を対象にして、共通テスト(国語・数学・英語の3教科でそれぞれ200点の計600点)の成績により最終合格者を決定する。
理科なし!? 面接試験(口頭試問)で数学と物理の能力を評価してしまうのか。
2023年度入試結果:
<材料工学EP>
募集人員8人に対して志願者16人、合格者6人。
<海洋空間のシステムデザインEP>
募集人員10人に対して志願者27人、合格者9人。
海洋空間のシステムデザインEPを熱烈に志望する受験生であれば、総合型選抜と一般選抜を併願しても良いと思う。
学校推薦型選抜
共通テスト後に出願する。化学・生命系学科のみが実施し、募集人員の全体に占める割合は、化学EP&化学応用EPは19.1%と高く、バイオEPは10.7%と低い。
選抜方法は、共通テスト、推薦書、調査書および面接によって行われる。
これは高校の成績が優秀で、共通テストで高得点を取れる生徒が合格する「共通テスト高得点型」だ。共通テスト得点率80%なら合格できるだろうけど、それより少し低いところに合格ラインがあると思う。
まとめ
入試難易度では、横浜国大理工学部は電通大、東京農工大(工学部)より少し難しいのではないかと思う。だからといって、どの専攻分野でも横浜国大が良いということにはならない。また、オープンキャンパスでの印象や高大連携プログラムでの経験など、そういったものを大事にする方が良いと思う。