令和6年度から、神奈川県の学力向上進学重点校(以下、進学重点校)として、新たに横浜緑ケ丘、多摩、小田原の3校が指定された。これで神奈川県の進学重点校は8校になる。この3校はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校である。
今回は、この3校の教育課程表に示されている文系・理系コース分けのタイミングや、数学・理科・探究への取組みを見ていきたい。
横浜翠嵐・湘南・柏陽・厚木・川和の5校については以下の記事を参照:
進学重点校の教育課程表で見る教育方針の違い - 公立ルートを行く
横浜緑ケ丘高校
「令和2年度教育課程」及び「学校案内パンフレット」より
- 50分授業である。
※SSH指定校で50分授業というのは、多少違和感がある。 - 高1は共通履修で、数IA、化学基礎、生物基礎を必修する。
※高1で物理基礎を履修しないのは湘南高校と同じパターン。 - 高2では、数IIBC、化学を必修する。物理基礎または地学基礎を選択履修する。
※高2で化学を必修するのは、湘南高校と同じパターン。一方で、物理基礎を履修しない(地学基礎で代替する)選択肢が初めて出てきた。高校で「物理」という名が付く科目を全く履修しない可能性があるのか。 - 高3で文系・理系に分かれる。I型(文系コース)では、地理歴史・公民、数学研究αから選択履修する。II型(理系コース)では、数IIIBCまたは数学研究βを履修する。理科については、化学、物理/生物を履修する。
※I型では、自由選択科目として化学基礎、生物基礎を履修できるものの、私大文系受験を前提にしている印象を受ける(湘南の高3文系コースと比べればわかりやすい)。 - SSHの教育課程の特例として「総合的な探究の時間」と「情報」の二つの科目を融合させた授業として「緑の探究I・II・III」が設置されている。
※高2で化学必修なのは、他には湘南と厚木の2校だけである。国公立大学合格実績が上がってきてもおかしくない。進学重点校になることで少し変わるかもしれない。
多摩高校
「教育課程(R4年度入学生)」より
- 70分授業である。
※湘南と同じ。柏陽・厚木(65分)より長い。 - 文系・理系のコース分けはなく、科目選択制である。
- 高1は共通履修で、数IA、化学基礎、物理基礎を必修する。
※高1で生物基礎を履修しないパターンが初めて出てきた。 - 高2では、数IIBC、生物基礎を必修する。化学は選択科目である。
※化学を選択するかしないかで、実質的に文系か理系かが決まる。 - 高3では、数IIIC、化学、物理、生物などを選択履修する。
- SSHの教育課程の特例として「総合的な探究の時間」と「情報」の二つの科目を融合させた授業として、「Meraki I・II・III」が設置されている。
※文系・理系のコース分けがなく、生徒が自分の目指す大学に合わせて科目を選択するスタイルが興味深い。
小田原高校
「令和5年度入学生用教育課程」及び「学校案内パンフレット令和5年度版」より
- 65分授業である。
- 高1は共通履修で、数IA、化学基礎、物理基礎、生物基礎を必修する。
- 高2で文系・理系に分かれる。文系コースでは、数II及び数学Σを必修する。理系コースでは、数II、数学Σ、化学、物理/生物を履修する。
※数学Σは、SSHの特例による科目である。 - 高3で国公立文系I型(地歴・公民2科目)、国公立文系II型(地歴・公民1科目、数学1科目)、私立文系、国公立理系I型(数III及び数学Σ)、国公立理系II型(数IIIの代わりに数学特講)、私立理系I(数III及び数学Σ)、私立理系II(数学特講)の7つのコースに分かれる。
※これだけコース分けがあるのは珍しいのではないだろうか。この学校は良い意味で面倒見が良いのだと思う。しかし、多摩高校とは対極のスタンスである。 - 探究として、高1で理数探究基礎及びOdatech I、高2で理数探究、数学Σ及びOdatech II、高3で理数探究(必修)及び数学Σ(理系のみ)を履修する。
※Odatechは、SSHの特例による科目である。
まとめ
- 進学重点校8校の教育課程表を見てきた。高2で文系・理系に分かれるのは、横浜翠嵐、柏陽、川和、多摩、小田原の5校である(高2の選択科目で実質的に文系・理系に分かれる学校を含む)。高3で文系・理系に分かれるのは湘南、厚木、横浜緑ケ丘の3校である。高2で化学を必修するかどうかで決まる。
- 探究に力を入れているのは、厚木、横浜緑ケ丘、多摩、小田原の4校で、全てSSH指定校である。
- 進学重点校8校それぞれに個性がある。どの学校が自分に向いているのか。何を優先するかによって自然に答えは出てくると思う。
総まとめ編は以下の記事を参照:
公立上位校の教育課程表を見る5つのポイント(総まとめ編) - 公立ルートを行く