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海老名高校はなぜ学力検査重視の入試選考基準を採用したのか

 海老名高校は、県央地区の公立上位校である。同校は、2024年入試選考基準として37型(内申3、学力検査7)を採用した。学力検査を重視した37型は、神奈川県公立高校(全日制)のうち10校しか採用していない。各校それぞれに戦略的な意図があるはずである。今回は、海老名高校が37型を採用した背景について考えてみたい。

 

 海老名といえば、日本酒好きには「いづみ橋」である。失礼。

 

37型を採用した公立10校

学力向上進学重点校
及び同エントリー校4校

横浜翠嵐、柏陽、横須賀、平塚江南

中高一貫校1校
横浜市立サイエンスフロンティア

上位校4校
横浜市立桜丘、横浜市立金沢、海老名、神奈川総合

中堅校1校
大船
 

 公立上位校4校は、「進学重点校を全力で目指すかどうかの境界線」に位置している。

以下のブログを参照:

www.dtline2002.com

 

海老名高校は地理的条件に恵まれている

 海老名高校は、小田急小田原線、相鉄線、JR相模線の3つの路線が重なる海老名駅から徒歩20分の場所にある。駅から徒歩20分というのはちょっと遠いのだが、3つの路線から通えるのは大きい。小田急線とJRが重なる厚木駅からだと徒歩12分である。2024年度用「神奈川県高校受験案内」(声の教育社)の同校の紹介ページを見ると、進学区域トップ5が相模原市18%、厚木市18%、海老名市12%、大和市8%、横浜市7%となっていて、かなり広範囲なエリアから生徒が通っていることがわかる。小田急小田原線の厚木から本厚木に向かう途中で相模川を渡るが、ここで車窓の景色が急に変わるように感じる。相模川を渡る前に位置していて、3つの路線が重なるというのは結構なアドバンテージだと思う。

 

 海老名高校は、地理的条件に恵まれている強みを活かして、37型を採用したのではないかと思う。

 

海老名高校のライバル校は茅ケ崎北陵高校

 3つの路線沿線のライバル校を考えたとき、入試難易度が拮抗しているのは茅ケ崎北陵高校である。

 

2024年度用「神奈川県高校受験案内」
(声の教育社)より

合格者平均(2023年入試)

       内申   学力検査  偏差値

茅ケ崎北陵     116.8         391.5            60.0
海老名       118.3         386.6            59.8

 

 茅ケ崎北陵高校はエントリー校であり、2024年入試選考基準は461型(内申4、学力検査6、特色検査1)を採用する。海老名高校が37型を採用することで、両校の入試難易度の差はほぼゼロになるのではないだろうか。

 

入試選考基準の違いによる影響

 内申1点を学力検査に換算すると、46型(内申4、学力検査6)が2.46点、37型(内申3、学力検査7)が1.58点になる。

 二人の受験生の内申の差が3点であった場合、内申の高い受験生のアドバンテージは、46型の場合で学力検査7.38点、37型の場合で同4.74点になる。点数差は2.64点なので、それほど気になくて良いようにも思える。

 

 しかし、37型は、高校からのメッセージ(学力検査を重視しますよ)の意味合いが大きい。このメッセージを受けて受験生は動くので、受験生の母集団が変わる(学力検査に自信のある受験生が集まる)。

 

海老名高校の公立上位校としての魅力は増す

 海老名高校は、37型を採用することで、学力検査に自信のある受験生を増やす考えであり、地理的条件に恵まれているので、受験生が他校にシフトするリスクは低いと判断しているのではないかと思う。「進学重点校を目指すかどうかの境界線」に位置している同校ならではの戦略である。進学重点校を目指すかどうかで悩む受験生に対して、海老名高校は魅力的な公立上位校としてパワーアップする。