公立ルートを行く

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柏陽高校と厚木高校の入試選考基準に現れたスタンスの違い

  神奈川県公立ナンバー3(No3)の地位を確立した柏陽高校と、県央地区トップの厚木高校。今回はこの両校のライバル関係について考えてみたい。

 

両校へのアクセス

 両校は地理的にかなり離れているが、柏陽高校がJR根岸線本郷台駅から徒歩5分とアクセスが良く、厚木高校が小田急線本厚木駅から徒歩20分とアクセスがやや悪いため、JR横浜線沿線や東急田園都市線沿線では、通学時間がほぼ同じになる場所がある。柏陽高校か厚木高校かで悩む受験生はいるはずである。

 

大学合格実績

 2023年大学合格実績では、東大現役合格者数が柏陽高校ゼロ、厚木高校5人の結果となり、神奈川県公立No3を自認しているであろう柏陽高校はちょっと悔しかったのではないかと思う。東工大現役合格者数も柏陽8人、厚木9人であった。しかし、東大以外の旧帝*1の現役合格者数が柏陽23人、厚木6人と差が付き、トータルでは柏陽高校の大学合格実績が厚木高校のそれを上回る結果となった。大学合格実績を測る二つの指標は以下の通りである:

 

 柏陽高校
 国公立大学現役合格率 42.8%
 難関国公立大学現役合格率 11.0%

 

 厚木高校
 国公立大学現役合格率 35.5%
 難関国公立大学現役合格率 7.8%

 

以下を参照:

大学合格実績は二つの指標のバランスで評価する - 公立ルートを行く

 

授業内容

 両校ともに、生徒の国公立大学進学を前提にしており、文系・理系に別れるのは高3からである。65分授業を採用し、探究活動(授業)に力を入れている点でも共通している。但し、厚木高校は、2013年から現在に至るまでSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)指定を受けているのに対して、柏陽高校は2003年から3年間だけのSSH指定なので、探究活動では厚木高校の方が優れていると思われる。今年8月9日に公開された厚木高校の「オンライン学校説明会」の動画を見ても、その自信のほどが窺われる。

 

2023年入試難易度

2024年度用「神奈川県高校受験案内」
(声の教育社)より:
合格者平均

        内申  学力検査  全県模試
                                                      偏差値

柏陽高校      127.2       444.7          69.6
厚木高校      126.5       430.6          67.7

 

 柏陽高校の方が入試難易度は高い。両校の学力検査の得点差14点はかなり大きい。厚木高校の合格者で、合格者平均よりも少し低いゾーンにいた場合、柏陽高校を受験した場合には危なかったかもしれない。

 

2024年入試選考基準に両校のスタンスの違いが現れた

 柏陽高校は学力検査を重視した372型(内申3、学力検査7、特色検査2)、厚木高校はバランスを重視した462型(内申4、学力検査6、特色検査2)を採用する。ここに、両校のスタンスの違いが現れたように思うのである。

 

 厚木高校は、1902年創立の伝統校である。小田急線、JR相模線、相鉄線が縦横に走る県央地区に確固たる勢力圏を有しており、バランス重視の入試選考基準(462型)を採用しておけば、自然と優秀な生徒が集まってくる。同校のトップ15以内の生徒が東大や東工大などの難関国公立大学に合格する要因はこの辺にあると思う。

 

 柏陽高校は、1967年創立である。地理的には横浜翠嵐高校と湘南高校に挟まれていて、厚木高校のような確固たる勢力圏を有しているわけではない。神奈川県公立No3の地位を守るため、あるいはその地位をさらに強化するため、学力検査重視の入試選考基準を選んだのではないだろうか。

 

柏陽高校の入試倍率は読めない

 横浜翠嵐高校は、今や首都圏トップの公立高校である。入試難易度がどれだけ高くなっても、そのブランドに憧れる受験生はチャレンジするだろう。しかし、柏陽高校の場合、神奈川県公立No3の地位を得るために、受験生がどこまで入試リスクを取るだろうか。受験生がどういう反応をするかは、11月下旬以降にならないとわからない。

 

 しかし、改めて考えると、学校の歴史が比較的浅いのに神奈川県公立No3の地位を築いたことはすごい。柏陽高校は、非常に戦略的な学校なのだと思う。

 

厚木高校の県央地区トップの存在感は揺るがない

 厚木高校の場合、学力向上進学重点校の中では入試難易度が適度なレベルにある。特色検査が難しいので、内申123でも普通に狙えると思う。同校の最大の魅力は、これからの時代の教育として重要さを増している探究活動が充実していることである。同校の県央地区トップの存在感は今後も揺るぎないものであることは容易に予想できるのである。

 

*1:北海道大学、東北大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学を指す。