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東京学芸大学附属高校の合格ラインはどこか

 首都圏トップ校(横浜翠嵐、日比谷)の受験生が併願する東京学芸大学附属高校(以下、学附)の入試難易度は、正規合格者+繰り上げ合格者で考えた場合、本当のところはどの程度なのだろうか。首都圏トップ校以外の受験生にも合格のチャンスはあるのだろうか。

 

合格者数からの入試難易度推定
(2023年入試)

 学附の入試結果(同校HP開示)とステップ(神奈川県高校受験塾トップ)の学附合格者数(HP開示)に基づいて、以下のプロセスで推定してみる:

 

 学附の正規合格者数266人
 ステップ生の学附合格者数188人

   ↓

 ステップ生の学附正規合格者数133人
 (占有率50%)と仮定

   ↓

 ステップ生の学附繰り上げ合格者数55人

 

 学附は募集定員120名に対して266人も正規合格者を出している(毎年増えている)。東京都の有力塾からの合格もあるから、ステップ生の正規合格者占有率は最大でも50%と考えて良さそうである。そのように仮定すると、繰り上げ合格者55人という数字が出てくる。

 

 横浜翠嵐と学附にW合格した場合、現在の状況では学附を辞退すると考えるのが自然である。そうすると、ステップ生の繰り上げ合格者は主に横浜翠嵐に不合格になった受験生である可能性が高い。このことから、以下の結論が導かれる:

 

 横浜翠嵐の合格ライン>学附の合格ライン

 

 それでは、学附の合格ラインはどこかということになるが、そこはなかなか難しい。ただ、湘南合格者ゾーンのど真ん中なら普通にチャンスがあると思うし、柏陽の上位合格者もチャンスがあるのではないかと思う。

 

 ステップの横浜翠嵐合格者は132人(受験者178人)である。さすがに、横浜翠嵐に不合格になった56人全員が学附に合格したわけではないと思う。他の塾もあるし。ただ一つ言えるのは、横浜翠嵐の場合、別の日にもう一度入試をしたら、50人ぐらいは合格者と不合格者が入れ替わる可能性があることである。横浜翠嵐に不合格になった受験生といっても、十分に合格の可能性があったのだと思う。そう考えると、この問題(学附の合格ラインはどこか)はどんどん難しくなる。

 
大学合格実績による入試難易度推定

 例の二つの指標で評価してみる:

括弧内左側数値:国公立大学現役合格率
括弧内右側数値:難関国公立大学現役合格率*1
 各校開示情報に基づく

横浜翠嵐(54.7%、36.9%)
学附(24.5%、14.2%)
湘南(32.4%、16.8%)
柏陽(42.8%、11.0%)

 

 学附は大学受験を意識しない本物教育を実践しているので、浪人率が45−50%と高い。また、中学からの内部進学生が2/3、高校からの外部進学生が1/3の構成になっているが、内部進学生と外部進学生のそれぞれの大学合格実績はわからない。今回は難関国公立大学現役合格率を重視すると、学附の大学合格実績は湘南と同レベルということになる。国公立大学医学部合格者数23人(現役13、既卒10)は、横浜翠嵐を除けば、なかなか出せる数字ではない。

 

入試問題

 2023年入試(学力検査)の湘南高校合格者平均は460.8点*2(500点満点に対して92%)であるのに対して、学附の入試合格者平均は350点程度*3(70%)と推定されるので、学附の入試問題の方が神奈川県公立高校の入試問題より難しい。

 

 学附の問題を眺めた印象だが、数学では思考力問題(図形、数の規則性)が難しい。ただ、神奈川県の特色検査問題(横浜翠嵐と厚木が選択する2題)の方がもっと難しい。英語はとにかく長文読解である。理科は単元網羅的で問題数が多く、ハイスピード競争である。社会は地理分野の思考力問題が難しいとされている。国語は神奈川県の国語よりは当然難しいだろう。

 

 早慶附属高校を併願する場合、数学と英語については高校の学習内容の一部を先取りするため、神奈川県公立高校入試問題(数学、英語)が相対的に易しくなり、数学・英語の得点を少し上げるのではないかと思う。

 

 学附対策としては、国語読解問題と地理の思考力問題への対策が先ず考えられるが、神奈川県公立高校入試の得点を分かりやすく上げる効果があるのかどうかはわからない。もちろん、学附の良質な過去問に取り組むメリットはあるだろう。

 

学附を受験するか

 神奈川県の学力向上進学重点校(以下、進学重点校)が第一希望の場合、横浜翠嵐以外の進学重点校が不合格で学附が繰り上げ合格となる可能性はかなり低い。一方で、横浜翠嵐が不合格で学附が繰り上げ合格となる可能性はそれなりにある。従って、極論すれば、横浜翠嵐受験者だけが学附を併願する意味があると思う。

 

 学附が第一希望で、進学重点校(横浜翠嵐以外)が第二希望の場合は、学附に合格するチャンスは増えつつある(学附の直近3カ年の正規合格者数は221人→240人→266人で推移している)。

 

学附は公立トップ校受験生にとって魅力的な高校である

 学附にもし入ったら、浪人は想定内になる。しかし、そこには豊かな学びがありそうである。湘南と同等レベルの大学合格実績を有する国立の共学進学校が、神奈川県から通える場所(しかも地理的に湘南とは逆サイド)にある。

 

 石原都政時代の2003年に東京都の学区制が完全廃止され、日比谷を筆頭に都立上位校が復権し、学附の東大合格者数は減少し始めた。そして、2016年のいじめ問題発覚で、学附には「凋落」のイメージが付きまとうことになってしまった。しかし、フラットに眺めれば、学附は今も非常に魅力的な高校だと思う。

 

*1:難関国公立大学は、東大、東工大、一橋、旧帝、筑波、国公立大学医学部とする。

*2:2024年度「神奈川県高校受験案内」(声の教育社)による。

*3:同校HPで開示されている合格者平均点のうち、内申点を93点と仮定した。