公立ルートを行く

公立中学校で3年間を過ごし、高校受験を経験して、自分のベスト大学に進学する教育ルートの魅力を発信します

公立高校の生徒は数学の遅れをいつ挽回するか

 公立中学校から公立高校に進学し、国公立大学を目指す公立ルート。公立小学校の授業を満喫でき(非認知能力が育まれる)、公立中学校では多様性のある集団の中で自分の特徴を見つめることができる。こうした長所があるのだが、短所もある。公立ルートの弱点は、大学受験で戦うことになる中学受験組に対する数学の遅れである。

 今回は、公立高校の生徒が数学の遅れをいつ挽回するかについて考えたい。

 

数IIICを高2三学期終了までに習得する

 国公立大学(理系)の入学試験日(2月下旬)から逆算して考えると、数IIICを高2の三学期終了までに習得したい。高3の前半は、理科2科目(物理、化学、生物の中から2科目)に重点的に取り組む必要があるだ。ここまでは、大学受験の専門家でなくても導き出せる。

 

 公立高校の教育課程表に従っていたら、普通は間に合わない。それでは、どういうスケジュールが良いのだろうか。子供の能力やその時々の勉強へのモチベーションによっても変わってくるから、誰にでも当てはまる正解はないと思う。我が子(娘)の場合で想像してみると、高1夏休みの終わりまでに数IAを習得、高2夏休み前までに数IIBを習得、高2夏休みから数IIICの勉強開始といったスケジュールをアドバイスするかもしれない。高校の授業を復習の場にできれば、好循環に入ることができる。

 

高3では大学で習う数学の一部を勉強する

 テイラー展開、オイラーの公式、回転行列、ベクトルの外積などは高校生のうちに勉強した方が得なのではないかと思う。ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)は角運動量保存則のことだが、角運動量はベクトルの外積である。オイラーの公式を使えるようになれば、裏技で計算速度を上げられる場面があるのではないかと思う。三角関数の加法定理をただ丸暗記しないで済む。

 

参考書ルートについて

 参考書ルートに関する情報は無料で配信されており、この有益な情報を活用しない手はない。参考書ルートの中で、議論が別れるのが青チャートの取り扱いであるが、様々な意見を参考にすると、「公立高校の生徒が青チャートにまともに取り組んでいたら、タイムオーバーになる。」という結論になるかと思う。

 

マイペース学習のサポート環境を作る

 数学を独学で習得するのは困難なので、わからない問題があったら質問し指導を受けられる環境が必要がある。予備校に通って週に1回、2回講義を受けるのではなく、自分のペースで勉強していく中でサポートを受けるイメージである。

 

中3で数IAの一部を勉強する

 できれば、数IAの一部(特に場合の数と確率)は、中3で勉強しておきたい。早慶附属高校を目指す受験生は普通に勉強するであろうし、首都圏トップの公立高校(横浜翠嵐、日比谷)を目指す受験生も併願校対策で勉強するはずである。早慶附属高校を受験する予定のない公立上位校狙いの受験生も取り組んだ方が良いと思う。具体的な目標を考えるとしたら、数検準2級合格になるであろうか。しかし、その余裕ないなぁ。

 

(追記)
 我が子が中3の9月に入って突然、「数検準2級を受ける。」と言い出して、個人塾の先生の指導によって合格することができた。数検準2級の問題(2次試験)をみると、前半の6問はなんとかなるが、中3で後半の4問を解くのは大変そうな気がする。我が子は前半の6問は全問正解、後半の4問のうち2問を正解した。実は数検準2級を受験するもう一つのメリットは、2次試験が90分と長いことである。大学入試の数学の試験時間(120分〜180分)とは比較にならないが、中3で90分の数学の試験を経験できたことは本人にとって良い経験になったと思う。

 

数IAをいつ爆速で終わらせるかが鍵

 何事もスタートダッシュが肝心である。中3で数IAの一部を勉強し、高1の夏休み中に数IAを仕上げる(授業を復習の場に使える程度に習得する)ことができれば、数学の遅れを挽回できたと考えても良いのではないかと思う。

 

 しかし、これが難しい。高1の4月と5月は、新しい友達作りや部活動に慣れることが最優先である。定期テストもあるし、あっという間に一学期は終わってしまう。ということは、

 

 公立高校合格発表日(2/28)の翌日から公立高校入学式(4月上旬)の1か月の間に爆速で数IAに取り組めるかどうか(終わらせるという意味ではない)

 

にかかってくる。ということは、

 

 高校受験でお世話になった個人塾の先生に数IAを指導してもらう

 

のがベストかもしれないのである。私が考える高校受験から大学受験への接続とは、数IAへのアプローチのことである。

 

以下の記事を参照:

www.dtline2002.com

 

補記:高校数学の教育課程

 現在の数学I、数学II、数学III、数学A、数学B、数学Cの6科目構成が登場したのは1994年である。数学Cについては、2012年に一旦廃止され、2022年に復活した。単元によっては科目間を移動しており、例えば2015年にベクトルはどの科目で教えられていたか、専門家でないとわからない。単元としては、行列、ベクトル、複素数平面、数列などが揺れ動いているようだ。複素数平面は数学IIIから数学Cに移動、ベクトルは数学Bから数学Cに移動した。尚、行列は2012年に教育課程から消滅した。

 

 2025年大学入学共通テストの数IIBは数II BCに変わる。数列、統計、ベクトル、複素数平面から3項目を選択する。

 

 高2で文系・理系にコースが分かれる教育課程表だと、行列はもとより、ベクトルも複素数平面も習わない。その概念に触れることもないのか。

 

 1980年代の終わり頃に「ホーキング、宇宙を語る」と題した一般向け科学者が出版され、日本でも大ベストセラーになった。著者はイギリスの理論物理学者であるスティーヴン・W・ホーキング博士(1942−2018)である。この本の中に「虚時間」が登場してくる。虚数(i)の本質など全然わからなくても、何か深淵な世界があるような気がした。それ以来、虚数のことがずっと頭の中にあった。これからは「虚数って何?」みたいなことになってしまうのだろうか。