公立ルートを行く

公立中学校で3年間を過ごし、高校受験を経験して、自分のベスト大学に進学する教育ルートの魅力を発信します

横浜翠嵐高校は今や首都圏トップ校, 本気で東大を狙うなら受験したい

特色検査3の衝撃

 横浜翠嵐高校の2024年入試選考基準は、内申3、学力検査7、特色検査3に変更された。塾の先生や生徒・親の多くは372型か282型を予想していたと思うが、特色検査が3に引き上げられたことは想像の域を超えていたのではないか。

 

 特色検査は、地頭の良さが問われるテストである。横浜翠嵐高校から受験生へのメッセージは、「東大に行けそうな生徒、本気で東大を目指す生徒から合格させます。」であるようにも読み取れる。神奈川県の公立トップ校というよりは、今や首都圏の公立トップ校になった横浜翠嵐ならではのメッセージである。

 

他の進学重点校と比較しても、合格基準が異常に高い

 2024年度用「神奈川県高校受験案内」(声の教育社)によれば、横浜翠嵐高校の2023年入試合格者の内申平均は127.2で、川和高校の方が高いくらいである。しかし、学力検査の合格者平均は465.2点で、これはどう考えても異常な高さである。学力向上進学重点校(以下、進学重点校)を目指す場合、数学80点、理科85点、国語・英語・社会90点で合計435点をベースラインに考えると思う。合格者平均が465点ということは、このベースラインよりさらに30点上積みしなければならないのである。数学と理科は合わせて10点加算が限界なので、国語・英語・社会で20点加算、つまり平均97点ぐらいにしなければならないことになる。

 

 横浜翠嵐高校の特色検査は、学校が選択する2題が難しい。特色検査の合格者平均に関する情報はなぜか見当たらないので、はっきりしたことは言えないが、合格者平均は60点前後ではないか。恐らく、同じ問題を選択する厚木高校の合格者平均より10点程度は高いと思う。

 

 高校受験では、その学校をどうしても受けたい場合は、ボーダーラインを読んで合否リスクを判断することになるが、普通は合格安全圏を考えて受験するかどうかを決めると思う。学力検査で465点、悪くても455点以上を想定できる受験生は上位1%いるのかどうか。

 

特色検査は、変動率(ボラティリティ)が高いテスト

 特色検査は、学力検査と比較して変動率(ボラティリティ)が高いテストである。ある受験生が平均60点の実力があったとしても、当日出される問題との相性やコンディションによって、±10点程度は変動してもおかしくない。特色検査の10点は、学力検査点数換算で21点に相当する。学力検査で465点取れても、特色検査の調子が悪かったら(10点下振れしたら)、不合格の可能性が出てくるのである。ボーダーラインを読んで、学力検査450点でも大丈夫だろうと思って受験し、特色検査が50点ぐらいだったら、もう危ない。

 

横浜翠嵐高校を受験校に決めるとき、その機会費用も考考慮したい

 横浜翠嵐高校にあと一歩のところで不合格になった生徒は、もし他の進学重点校にしていたら合格したはずである。例えば、横浜翠嵐高校にするか柏陽高校にするかで最後まで迷い、横浜翠嵐高校合格で将来得られる便益(学習環境、仲間、ブランド価値など)が大きいと判断して同校を受験校に決めたとき、柏陽高校合格により得られる将来便益を放棄したことになるのである。経済学では、この放棄する将来便益のことを「機会費用」(opportunity cost)という。横浜翠嵐高校を受験校に決めるときには、この機会費用も考慮したい。

 

高校受験はリスクとリターンのバランスが大事

 横浜翠嵐高校の2024年入試の合否リスク(ダウンサイドだけでなくアップサイドも)は間違いなく上昇する。私は、「高校受験はどこまでリスクを取っていいものなのだろうか」と考えてしまうのである。リスクとリターンの考え方は人それぞれなので、正解は一つではない。学校から受験生へのメッセージが「東大に行けそうな生徒、本気で東大を目指す生徒から合格させます。」なのだとしたら、そこを目指す生徒だけがリスクを取って横浜翠嵐高校を受けるのが良いと思う。