公立ルートを行く

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川和高校は内申重視の進学重点校

 川和高校は、言わずと知れた神奈川県の学力向上進学重点校(以下、進学重点校)の1校である。いわゆる神奈川県公立高校トップ4の代名詞とされるSSKH*1の一角を占める学校であり、横浜北部・川崎地区の中学生にとって憧れの学校である。

 

入試選考基準461型はエントリー校の標準形

 今年6月上旬に「令和6年度神奈川県公立高等学校入学者選考基準」が公表され、川和高校の内申点、学力検査、特色検査の比率(一次選考)は4:6:1型(以下、461型)に変更となった。従来の441型よりは学力検査の比率が引き上げられたものの、特色検査の比率は1に抑えられたままである。461型は、学力向上進学重点校エントリー校(進学重点校の一つ下のカテゴリ。以下、エントリー校)の標準形である。

 

内申重視の背景はその勢力圏にある

 川和高校が進学重点校としては内申のウェイトが高い461型を採用したことについて、川和高校から受験生へのメッセージを「内申の高い生徒から合格させます。」と私は読み取る。川和高校はなぜ内申重視なのだろうか。その背景を読み解く鍵は、同校の勢力圏にあると私は考えている。

 

 川和高校の勢力圏は、西端が東急田園都市線、東端が東急東横線、南端がJR横浜線、そして北端が横浜市営地下鉄ブルーラインに囲まれた地域である。県内でも高所得層が多く住む地域であり、都心に近い位置にある。川和高校は、首都圏の高校の中で早慶・MARCH等の有名私立大学の指定校推薦枠*2を多く持つと言われている。公立中学校で高い内申を取る子は、勉強も部活も全力で頑張るタイプが多い。こうしたタイプの子が川和高校に入り、高校時代も勉強と部活動をしっかり頑張り、指定校推薦を勝ち取って有名私立大学に進学するルートが一つの定番になっているのではないか。親子共々、地方の旧帝に行くより、自宅から通える都内の有名私立大学への進学を好むのである。川和高校が他の進学重点校に比べて上位の国公立大学の合格者数がやや少ないのは、この辺に理由があると思う。

 

多摩高校の追い上げに耐えられるか

 県が指定する進学重点校は、本来であれば上位の国公立大学の現役合格実績の向上が求められていると思う。川和高校は、進学重点校5校の中で、他の4校とはちょっと違った方向(上位の国公立大学現役合格者数にそこまで拘らない)に向かっている印象を受ける。近隣のライバル校である多摩高校(エントリー校)の方が進学重点校と同じ方向に向かっており、近い将来、川和高校は多摩高校に大学合格実績で逆転されるのではないかと見ている人もいる。

 

 2024年度用「神奈川県高校受験案内」(声の教育社)によれば、川和高校への進学区域として川崎市の割合が22%となっている。一方で、多摩高校への進学区域として横浜市の割合は27%である。「横浜市から多摩高校に結構行くんだ。」という意味で、この数字はちょっと意外である。地理的条件の差により、川和高校が多摩高校に若干勝ると思っていたが、どうもそうとは限らないらしい。このライバル関係は今後要注目である。

 

横浜翠嵐・柏陽から川和にシフトする受験生が増える可能性

 2024年入試から、横浜翠嵐高校が373型(特色検査の比率が3!)を採用すること、また柏陽高校が学力検査のウェイトを高めた372型を採用することにより、高内申の受験生が川和高校にシフトする可能性がある。この辺のところは、12月以降にならないと見えてこない。

 

川和高校を受験校にするポイント

 川和高校は、高い内申点を持つ安全重視の受験生にとって最適な受験校である。2023年入試の川和高校合格者の内申平均は129(素内申43)である。仮に内申120の生徒が同校を受験する場合、内申129の生徒に対して、学力検査への点数換算で約22点のビハインドになる。これは結構シビアだ。内申126以上は欲しい。他方、進学重点校の中で特色検査の比率が1と低いのは川和高校だけであり、内申と学力検査で合格安全圏にいれば、特色検査で逆転される可能性は他の進学重点校よりもかなり低い。

 

 将来理系に進む予定の場合、柏陽高校や厚木高校の方がやや魅力的である。とは言うものの、横浜北部・川崎地区から柏陽、厚木に通うのは遠いから困る。まぁ、数年前に東大理III合格者が出たくらいなので、本人次第ではある。

 

*1:週間東洋経済2016年10月15日号で「大学より濃い校風と人脈 高校力 公立の逆襲」と題した特集が組まれ、神奈川県の公立高校で大きく取り上げられたのが、横浜翠嵐、湘南、川和、柏陽の4校であった。この4校の頭文字をとってSSKHという言葉が生まれた。厚木高校が漏れたのが今もって謎である。

*2:学校推薦型選抜は、指定校推薦と公募推薦からなる。