公立ルートを行く

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「高校数学でわかる」シリーズで高校物理の先を垣間見る

ブルーバックスの対象読者は誰なんだろう

 ブルーバックスは、講談社が刊行している一般読者向けの科学シリーズである。「子供から大人まで楽しめる」というのがキャッチコピーだが、本当のところ、ブルーバックスの対象読者は誰なんだろう? 学校の勉強では飽きたらない中高生、専門分野外のテーマについてサクッと読みたい理系の大学生、科学に興味のある文系の大学生、世の中で関心が高まっているテーマに関して気楽な読み物を探している社会人、いずれにしても読者層は限られているような気がする。ただ、私のような下手の横好き物理愛好家には、最高にありがたい本なのである。

 

高校物理は19世紀半ばまでのストーリー

  高校物理で学ぶ力学はニュートン力学であり、これは17世紀後半に確立したものである。電磁気のところで習う電磁誘導などは19世紀前半に発見されたものである。物理学は、19世紀後半から20世紀前半までの間に奇跡的な展開を見せる。高校物理というのは、日本史で例えれば、「ペリー来航」で話が終わってしまうようなものである。

 

「高校数学でわかる」シリーズ

 早稲田大学理工学部教授の竹内淳先生の著書である「高校数学でわかる」シリーズは、高校物理のその先の物理学の発展を垣間見せてくれる本である。(私が勝手に選んだ)代表的な3冊を時系列に並べると、以下のようになるかと思う。

 

 「高校数学でわかるマクスウェル方程式」

 「高校数学でわかる相対性理論」

 「高校数学でわかるシュレディンガー方程式」

 

 ジェームズ・クラーク・マクスウェルが1864年にマクスウェル方程式を発表し、これによって古典電磁気学が完成する。マクスウェルは、光は電磁場を伝わっていく振動(電磁波)であることを予言する。「高校数学でわかるマクスウェル方程式」では、積分形のマクスウェル方程式が展開される。そして最後に、マクスウェルがローレンツ力を方程式の中に入れなかったことに触れて、「エレキの謎を探る旅」はひとまず終わる。

 

 絶対空間・絶対時間を前提とするニュートン力学では、二つの慣性系の間でガリレイ変換が成り立っているとする。ところが、1887年に行われたマイケルソン・モーレーの実験で、光源が静止しているか動いているかにかかわらず、光速度が不変であることが明らかになり、人類はガリレイ変換では説明できない現象に直面する。アルバート・アインシュタインは、二つの慣性系の間にはローレンツ変換(ヘンドリック・ローレンツが1900年前後に提案したもの)が成り立っていることを仮定し、1905年にそれまでの時空の概念を大きく変えた特殊相対性理論を発表する。「高校数学でわかる相対性理論」では、ローレンツ変換によって時間の遅れやローレンツ収縮が起きることや、相対論的時空間の描像であるミンコフスキー時空の話が展開される。最後に、マクスウェルが方程式の中に入れなかったローレンツ力が「電磁現象の相対論的効果である」という謎解きがされる。

 

 物理学はここで完成とはならなかった。1897年に電子が発見され、物理学の対象はミクロな領域に向かっていく。そして、1926年にハイゼンベルクが行列力学、1927年にシュレディンガーがシュレディンガー方程式をそれぞれ発表し、量子力学が正式に誕生する。「高校数学でわかるシュレディンガー方程式」は、このシュレディンガー方程式を扱ったものである。

 

誰がいつ読むべきなのだろう

 我が子にも将来、上記の3冊を読んでもらいたい。できるだけ早い方が良いと思う。しかし、いつ読んだらいいんだろう。高校生のうちに読むとしたら高2かな(しかし読むかな)。