少し前の話になるが、子供(娘)が中学生になって生物に興味を持つようになったので、何の気なしに「ゾウの時間 ネズミの時間」(著者は本川達雄東京工業大学名誉教授)をアマゾンで買って渡した。1ヶ月ぐらいして、読むのに随分苦労していたので、自分で本を開いてみて驚いた。この本を中学生が読むのは無理だ。使われている数学が高校レベルなのである。子供には気の毒なことをしてしまった。
「ゾウの時間 ネズミの時ゾウの時間」で数学が必要になる部分
動物のサイズ(体重)が大きくなると、「時間」の流れる速度が遅くなる。時間は体重の1/4乗に比例する(体重が16倍になると、時間は2倍になる)。哺乳類では、どの動物でも一生の間に心臓は20億回打つ。鼓動一回に要する物理的な時間は動物によって違うが、それぞれの動物が感じる生理的な時間は変わらないらしい。
動物の種類ごとに、標準代謝量をE(単位はワット)、体重をW(単位はkg)として、対数グラフ(縦軸がlog E、横軸がlog W)に並べると、綺麗な右肩上がりの直線が現れる。式で表すと以下のようになる:
log E = log 定数 + 0.75 × log W
指数の式にすると、
E = 定数 × (Wの3/4乗)
標準代謝量は、体重の3/4乗に比例する。体重が16倍になると、標準代謝量は8倍になるので、体重が重い動物の方が単位体重当たりの標準代謝量が少ないことを意味する。体重の重い動物ほど、体重の軽い動物よりもスローモーションで生きているということか。
ゾウはネズミの体重の数万倍はあるので、そのままkgを使ったら、ゾウとネズミを一つのグラフにプロットできない。対数を取れば一つのグラフにプロットできる。対数グラフはこういう時に使うものなのか。なるほど。
(注)本の中では、上式の定数の部分に具体的な数値が入っているが、使われている数式(数学)を表したいだけなので、定数とした。
犬猫鳥などのペットが先にあの世に行くのはとても悲しい。ペットは子供みたいなものだから。しかし、物理的な時間は短くても、生理的な時間(体感的な時間)は人間と同じぐらいだとすれば、少し救われた気分になる。
この本がベストセラーになったのは驚きだ
「ゾウの時間 ネズミの時間」は1992年に中公新書から出版され、理科系読み物としては異例の大ベストセラーになった。恐らく、現在に至るまで読み続けられているロングベストセラーだと思う。1/4乗とか3/4乗が出てきて、対数グラフが出てくるこの本がベストセラーになったのは驚きだ。もし今、対数や指数が普通に出てくる本が教養書として出版されたら、どのくらい売れるのだろうか。
高校生が読むべき一冊
子供には、高校生の時にもう一度この本にトライしてもらいたい。こういう本を楽しめるようになって欲しいと願う。
子供が突然、10月の数検(準2級)を受けると言い出したので、最近申し込んだ。先ずは三角関数を勉強したらしい。まさか、このブログを読んでいるということはないだろう。念ずれば通じるということか。
以下の記事を参照: