これまでは以下のとおり:
#1 10年前には見えなかった進路が今現れている
#2 ビッグデータ・大規模高速計算処理環境・AIの3つの要素が揃う歴史的転換点を迎えている
#3 文理融合の2類型
今回は、大学入試制度をよく見ると、「文系」「理系」に加えて、「文理融合系」が存在することを確認する。
共通テストの地歴・公民1科目OK
&2次に地歴以外の選択可能
筑波大学 社会・国際学群が該当する。理系コースでも受験可能だ。教育カリキュラムに文理融合型の要素が組み込まれているので、理系の受験生にも門戸を開いている。
英数2科目型
横浜国立大学経済学部の2次は、英語・数学2科目。共通テストは地歴・公民1科目OK(但し、理科が増える)。つまり、理系でも受験できる。
慶應義塾大学経済学部のA方式は、英語・数学2科目に加えて小論文があるものの、理系でも受験できる。
経済学部は本来的には文理融合型学部であり、数学が必要になる。数学が課されない入試制度が存在するのは、大学受験市場の事情による。
英数2科目型は、文理融合型の思考力を効率的に測るフォーマットと言える。英語で言語能力、数学で数理能力を測り、この2つの異なる能力のバランスを見ることができる。
小論文型
横浜国立大学都市科学部の2次は小論文のみ。共通テスト(地歴・公民1科目OK)で基礎学力を確認し、小論文で文系思考を評価する。
慶應SFC(環境情報学部、総合政策学部)は、英語/英語・数学/数学/数学&情報の4パターンから1つを選択し(配点割合50%)、残りは小論文(配点割合50%)。
小論文は文系思考(課題発見、論点の整理・統合など)を測るもので、文理融合=数理思考×文系思考の後者を確認する役割を持つ。
理系の文理融合型入試
高校の理系コースに進むと、数IIIと理科発展科目(物理・化学・生物から2科目)を履修する。
筑波大学の社会工学類の2次は英語・数学2科目で理科は課されない。しかし、数学には数IIIが含まれるため、理系コースでないと受験は難しい。理科は2次試験で課されなくても、高校で物理や化学を履修している。
共通テストの配点割合が高いため、2次試験の英語と共通テストの文系科目の成績も重要になる。まさに、文理融合型入試の理想系と言える。
まとめ
高校生には、文系・理系双方の基礎力を持つオールラウンド型がいる。従来の理系フォーマットでは文系の強みを活かせず、文系フォーマットでは理系の強みを活かせない。
文理融合系の入試では、文系・理系の能力をバランスよく評価するため、オールラウンド型の強みを最大限に活かせる。
入試フォーマットへの適性が高いということは、大学入学後のカリキュラムへの適性が高いことを示唆している。
次回(最終回)は、文理融合系人材の戦略的価値について考えたい。