これまでは以下のとおり:
#1 10年前には見えなかった進路が今現れている
#2 ビッグデータ・大規模高速計算処理環境・AIの3つの要素が揃う歴史的転換点を迎えている
今回は、そもそも「文理融合」とは何かについて迫っていきたい。
文理融合の2類型
文理融合とは、文字どおり文系的なものと理系的なものを融合させることである。社会のさまざまな課題を解決するために、理系思考と文系思考を掛け合わせる取り組みを指す。
「文理融合」や「文理融合型学部」には、明確な定義があるわけではないが、次の2つのタイプに分けて整理すると、その構造が見えてくる。
①数理分析型
経済・社会・経営などの社会科学分野のデータを解析し、数理モデルとして表現して解決策を導くタイプである。
数理アプローチの中核は数理工学であり、数理統計、最適化理論、離散数学などを専門科目として学び、理論的に理解するレベルが「ハイエンド」にあたる。
数理工学の概要を学ぶレベルが「ミドルエンド(標準)」、テンプレート化された内容を扱うレベルが「ローエンド」となる。
一般的には、データサイエンス系の学部はこのタイプに属し、自分の考えでは、筑波大学 社会工学類は最高峰に位置する。
※数理工学そのものを研究するレイヤーは純粋理系になる。
②コーディネーション型
文系・理系にまたがる幅広い知見を結びつけ、社会課題の解決策を構想するタイプである。特定領域の専門性を深めるよりも、異なる分野の知を束ねて新しい構想を立てるプロデューサー的な能力が武器となる。
このタイプの代表例としては、慶應SFC(環境情報学部、総合政策学部)が挙げられる。
まとめ
文理融合/文理融合型学部には大きく分けて、次の二つのタイプがある。
1. 数理的アプローチで問題を解く
数理分析型
2. 異分野を結びつけて構想を立てる
コーディネーション型
数理分析型は、数理工学をどのレベルで学ぶかによってハイエンドからローエンドまで三層ぐらいに分かれる。
一方、コーディネーション型では、特定領域の専門性を獲得することは難しいが、PBL(Project Based Leaning)を通じて異なる知をつなぐ力を鍛えることができる。キーワードを一つ選ぶとすれば、異分野を自由に行き来する「越境力」だ。PBLにどれだけ本格的に取り組むかによって、教育内容には大きな差が生じるだろう。
次回(第4回)は、大学入試制度の側から見ても、「文系」「理系」に加えて、第三の領域として「文理融合系」が存在することを確認していきたい。