これまでは以下のとおり:
#1 10年前には見えなかった進路が今現れている
#2 ビッグデータ・大規模高速計算処理環境・AIの3つの要素が揃う歴史的転換点を迎えている
#3 文理融合の2類型
#4 大学入試には「文理融合系」が存在する
これまでの話
2010年代後半から、文理融合型学部が次々と新設されるようになった。文部科学省が2015年に国立大学法人に対して文系学部再編を促す通達を出したことが契機である。
少子化への対応という側面もあったが、その背景には、ビッグデータ・大規模高速計算処理環境(コンピューティングパワー)・AIという3つの要素が揃った歴史的転換点に、我々が生きているという事実がある。
文理融合とは、理系思考と文系思考を掛け合わせることである。文理融合型学部には、大きく「数理分析型」と「コーディネーション型」の2つがある。前者の中核は数理工学であり、数理統計・最適化理論・離散数学といった専門科目をどのレベルで学ぶかによって、ハイエンド・ミドルエンド・ローエンドの3層に分かれる。
コーディネーション型とは、異なる分野の知を結び付け、新しいソリューションを創出するタイプである。特定分野の専門性を深める代わりに、異分野を自由に行き来する「越境性」という武器を身に付ける。
大学入試をよく見ると、「文系」「理系」に加えて「文理融合系」という第3の領域が存在する。これは、文理両面の基礎力をバランス良く備えた人材を選抜する入試制度であり、新しい時代に適した選抜フォーマットといえる。
いよいよ、本シリーズの最終回。
文理融合系人材の戦略的価値
文理融合系の人材になるのは容易ではない。文系・理系の両方の基礎力を有するオールラウンド型が典型だが、このタイプがそんなに多いわけではない。だからこそ希少であり、戦略的価値が高い。
文理融合型学部では、PBL(Project Based Learning)を通じて、数理的アプローチを社会問題に適用したり、異なる分野の知を統合して新しい解決策を発見したりする経験を積むことができる。
数理的アプローチと越境性。これこそが、文理融合型学部での学びを通じて獲得できる最大の武器だ。文理融合系人材は希少であり、かつ強力な武器を有しているため、就職活動でも差別化ができる。そして、企業や組織の中ではAI導入や複合的な課題の解決プロジェクトで主役になりうる。
投資としての大学進学
文系学部の4年間の学費は約5百万円。インフレ経済の中で、遠くない将来には550万円、あるいは600万円に達するかもしれない。そのとき、大学進学の投資パフォーマンスが問われるようになる。単なる「就活の場所取り」では投資に見合わない。
この流れの中で、経済学部・経営学部・商学部・社会学部などは、より文理融合型の方向に近づいていくと予想する。データ分析、数理モデル、AIリテラシーといった要素を組み込むことで、教育の中身がアップデートされるはずだ。
文理融合型学部は、これからの学びの主軸の一つになり、キャリア形成の戦略的地点になる。