公立ルートを行く

公立上位校から学歴ピラミッドのスイートスポットへ

文理融合型学部の時代が始まった〜ビッグデータ、大規模高速計算処理環境、AIの3つの要素が揃う歴史的転換点を迎えている(#2)

 前回は、この10年間に文理融合型学部が次々と新設されるようになった起点は、少子化等を背景に出された2015年の文部科学省の通達であったことを確認した。

 それでは、文部科学省はなぜ2015年にあのような通達を出したのか。さらに、文理融合型学部がなぜ新設されるようになったのか。

 シリーズ第2回は、現在を生きる我々が、ビッグデータ、大規模高速計算処理環境、AIという3つの要素が全部揃った歴史的転換点にいることを見ていきたい。

 

 コンピュータとAIについては、その源流を辿れば1950年代ぐらいに基礎となるアーキテクチャが誕生した。しかし、AIを実用化するにはコンピュータの処理能力が不足していた。また、そもそもビッグデータが存在しなかった。

 

ビッグデータの蓄積

 1990年代にインターネットが登場し、2000年代に入ってスマホ、SNS、IoTなどが普及すると、膨大なデータが蓄積されるようになった。

 

大規模高速計算処理環境の実現

 2000年代に入り、マルチコアCPUやGPU(NVIDIAが代表)による並列計算が実用化され、大規模シミュレーションや統計解析に要する時間が大幅に短縮された。

 

AIの進化

 2006年にディープラーニング(深層学習)が実用化された。2024年ノーベル物理学賞を受賞したジェフリー・ヒントン氏(カナダトロント大学名誉教授)の功績によるものだ。これが現在まで続くAIブームの起点となった。2012年には、トロント大学チームによるAlexNetの画像認識精度が高く評価され、ディープラーニングに注目が集まるようになった。

 

 2010年代には、ビッグデータ、大規模高速計算処理環境、AIの3つの要素が揃い、データサイエンスを社会に活かす環境が整ったことが見えてくる。

 

 このような歴史的転換点を背景に、文部科学省は2015年に国立大学法人等への通達を出した。そして大学側は、文理融合型学部というコンセプトを明確に打ち出すことになる。

 

 次回は、そもそも文理融合とは何かについて掘り下げていきたい。