前のシリーズでは慶應SFCを取り上げた。恐らく、日本の大学で文理融合型を標榜した最初の学部であり、文理融合型学部の先駆けと言っていいのではないかと思う。しかし、慶應SFCは、誕生した1990年当時、大学界に突如現れた特異点のような存在で、他の大学が追随して文理融合型学部を新設するような動きはまだ現れなかった。
2025年の今。高2娘の第1志望は筑波大学社会工学類。私立の併願先としては慶應SFCに狙いを定めつつある。しかし、もし10年前の2015年に高校2年生だったら、文理融合型というコンセプトを認識できず、文系か理系かで悩み続けたかもしれない。
文理融合型学部が生まれる契機となったのは、2015年に文部科学省が国立大学に出した通達「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」のようだ。通達の中に、「教育養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」という部分があり、当時は文系学部を大幅に縮小する方針が打ち出されたとする記事が出回っていた。各大学は、この動きに対抗しつつ、活路を見出すために文理融合型学部を新設するようになった。
(新設例)
2017年:滋賀大学 データサイエンス学部
2018年:九州大学 共創学部
2018年:横浜国立大学 都市科学部
2025年に入ると、遂に最難関国立大学が動いた。東京大学が「College of Design」、東北大学が「ゲートウェイカレッジ」をそれぞれ2027年に新設すると発表した。
文理融合型学部の時代が本格的に始まったように思える。慶應SFCは長らく孤高の存在であったが、漸く時代が追い着いてきた。
次回は、文理融合型学部が誕生した理由を、ビッグデータ、大規模高速計算処理環境、AIという3つの歴史的条件から探ってみたい。