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国公立大学入試結果の無手勝流活用法② 合格幅と受験戦略

「国公立大学入試結果の無手勝流活用法」シリーズの第2回。今回は、合格者平均とボーダーの差(本ブログでは合格幅と呼ぶことにする)が何を意味するのか、また、その意味を理解した上でどういう受験戦略が考えられるのかについて書きたい。

 

 前回は、筑波大学の総合選抜理系Iと社会工学類の一般選抜前期日程(2025年度)の入試結果をもとに、正規分布仮定(正しくはない)で受験者平均と標準偏差を推定した(ChatGPTに計算してもらった)。

 

総合選抜理系I

入試倍率:3.63
合格者平均:61.3
ボーダー:57.6
合格幅:3.7 ←今回注目はここ
受験者平均:54.01(推定)
標準偏差:6.00(推定)

 

社会工学類
入試倍率:3.17
合格者平均:60.3
ボーダー:55.8
合格幅:4.5 ←今回注目はここ
受験者平均:52.45(推定)
標準偏差:6.96(推定)

 

ボーダー付近の受験者数

 受験者得点が正規分布に従うという仮定をする必要がなく、以下のことが言えるのではないかと思う。

 入試倍率が3倍台なので、受験者得点分布の真ん中よりは右側にボーダー(カットオフ)ラインがある。合格者平均(算術平均)は高得点者によって引き上げられるので、合格者得点の中央値(合格者100人なら50番目と51番目の平均)は合格者平均より少し低くなるはず。

 従って、合格者平均とボーダーに挟まれるゾーン(合格幅)には、合格者の50%かそれより少し多い人数(Aとする)が分布している。

 ボーダーの反対側(左側)はどうか。入試倍率3倍の場合、ボーダーとそれより合格幅だけ低い点に挟まれるゾーンには、Aよりも多い人数(Bとする)が分布している可能性が高い。

 つまり、ボーダーとその前後にある合格幅のゾーンには、合格者数かそれより少し多い人数(A+B)が分布していると考えられる。

 定員100人に対して300人の受験者がいる場合、神の視点(統計的な俯瞰)では、ボーダー付近の100人+αが激しく争っていて、残りの150人弱(合格者の上位50人弱と受験者の下位半分弱)はあまり関係ないように見えるかもしれない。

 

合格者平均とボーダーの差(合格幅)

 合格幅は、総合選抜理系3.7(100点満点換算なので3.7%でもある)、社会工学類4.5となっているが、これはどの程度のものなのか。

 共通テストや河合塾全統記述模試の標準偏差は20ぐらい(自分の推定)で、偏差値1あたりの得点差は2%程度。総合選抜理系Iの合格幅3.7は偏差値1.85の差、社会工学類の合格幅4.5は偏差値2.25の差に相当する。河合塾の偏差値は2.5刻みなので、河合塾の偏差値ランキング表で1ランク以内の差ということだ。

 難問が重要になってくる最難関大学の場合、一般模試の偏差値・得点率スケールを適用するのは難しくなる。

 ボーダーとその前後にある合格幅のゾーンには、B判定・C判定あたりの受験者がひしめいていて、入試当日のパフォーマンスによって容易に順位が入れ替わる激戦ゾーンであることがわかる。

 

2つの受験戦略

 合格確率70%かそれ以上を目指す場合、合格者平均を上回る得点(ボーダー+標準偏差)の実力が必要。ボーダーと合格者平均の差を生む重要問題を瞬時に認識し、しかも得点できるということ。

 一方で、五分五分の勝負で良いなら、ボーダーの得点力があれば、十分に勝機がある。入試当日のパフォーマンスで合格にも不合格にもなる。

 どちらの戦略を目指すかは、人それぞれ。我が家(高2娘)の場合、合格確率70%以上の戦略を選ぶ。