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公立上位校から学歴ピラミッドのスイートスポットへ

国公立大学入試結果の無手勝流活用法① 受験者平均と標準偏差の推定

 首都圏の国公立大学の入試結果を見ると、以下の3つの情報が開示されているケースが多い:

 入試倍率
 合格最低点(ボーダー)
 合格者平均点

 

 大学入試の得点分布は必ずしも正規分布ではない。学歴ピラミッドの頂点に立つ東京大学の場合、上位合格者の得点は青天井であり、横軸に得点、縦軸に人数を取ったグラフを見れば、正規分布曲線に対して右側の山が膨らんだ形状をしているはずだ。

 

 一方で、準難関国公立大学の場合、受験者の学力レンジはもう少し狭くなる。したがって、正規分布を仮定した場合の誤差は減少するだろう。

 

受験者平均と標準偏差の推定

 受験者の得点が正規分布に従うと仮定すると(もちろん厳密には正しくない)、入試倍率・ボーダー・合格者平均点から受験者平均と標準偏差を推定できる。

 自分は統計の専門家ではないので、計算には ChatGPT を活用し、推定結果を出してもらった。

 

<計算ロジック>

ボーダー(B)
B = 受験者平均 + σ × Z_B 

 

合格者平均(G)
G = 受験者平均 + σ × φ(Z_B)/p

 

 ここで、Z_B はボーダーに対応する標準正規分布の値(標準化したZ値)、φ(Z_B) は標準正規分布の確率密度、p は合格率(= 1 ÷ 倍率)を意味する。φ(Z_B)/p は切断正規分布の期待値補正項に相当する。言い換えると、母集団の平均からボーダーを超えた合格者平均までの距離(標準偏差換算)を示す値である。

 

実際の適用例

 筑波大学の総合選抜理系Iと社会工学類の一般選抜前期日程の入試結果に適用してみた結果は以下の通り:

 

※得点は 100点満点換算。

総合選抜理系I

入試倍率:3.63
合格者平均:61.3
ボーダー:57.6

推定結果
受験者平均:54.01
標準偏差:6.00

 

社会工学類
入試倍率:3.17
合格者平均:60.3
ボーダー:55.8

推定結果
受験者平均:52.45
標準偏差:6.96

 

 計算ステップが多いので、途中の小数点の取り扱いによって数値は微妙に変わる。今回は、少数6桁保持をオーダーした。

 

まとめ

 共通テストや河合塾全統記述模試の標準偏差は、自分の見立てでは約20(100点満点換算)。筑波大学の個別試験の場合、母集団の学力レンジが狭いため、標準偏差が小さく出るのは自然であり、今回の推定結果 6〜7 は定性的にもしっくりくる。

 正規分布仮定は厳密ではないが、受験者平均や標準偏差を目安として捉えると、入試全体像がより分かりやすくなる。

 

 次回は、合格者平均とボーダーの差(合格幅と呼ぶことにする)が何を意味するのか、またその意味を理解した上でどういう戦略が考えられるのかについて書きたい。