東大の足切りライン引き上げについては、最近までそれほど関心を持たなかった。しかし、東大の志願者数が実際に1,000人も減少したのを見て、国公立大学入試戦線に大きなインパクトをもたらすことにようやく気付いたところだ。
意味のある入試倍率は2〜2.5倍
東大が足切りラインを引き上げる(足切り倍率を3倍から2.5倍に引き下げる)デメリットは、共通テストのビハインドから逆転合格する受験者を失うことだろう。今回の足切りライン引き上げはこのデメリットが小さいことを意味する。デメリットを小さくするためにバッファーゾーンを設けるはずだ。2.0〜2.5倍がバッファーゾーンだとすれば、実は足切り倍率を2倍まで引き下げても、それほどのデメリットは生じないのかもしれない。
東大の足切りライン引き上げ(足切り倍率引き下げ)は、意味のある入試倍率が2〜2.5倍であることを教えてくれているように思う。
これだと個人的にはしっくりくる。合格のイスが100席として、安全圏にいる受験者は50人。残り50席をかけて100人の受験者が競うのが入試倍率1.5倍の世界。合格ライン(ボーダーライン)の上下数%のゾーンに100人がひしめく。公立高校入試では入試倍率1.5倍は激戦だ。
大学入試の場合、大学ごとに入試問題が異なること、共通テストと2次試験(個別学力検査)の配点割合が各大学で異なること、さらに2次試験の配点構成も異なることから、公立高校入試に比べたら、自分の合格力を正確に測定するのが難しくなる。この測定誤差がある分、入試倍率は上がると思う。
大逆転の合格は難しい
東大の入試配点は、共通テスト110点、2次試験440点の550点満点。共通テスト得点率10%(1000点満点で100点)の差は11点に圧縮されてしまう。2次試験で逆転可能と考えてもおかしくない。
しかし、東大の足切りライン引き上げは、大逆転は起きない過去の入試結果に基づいているはずだ。共通テストが難しくなったため、共通テスト得点率から2次試験の成績もある程度予測できるということだろう。
共通テスト対策の前倒し
共通テストの重要性が増すため、共通テスト対策の前倒しが起きそうだ。特に文系の場合、数IIIと理科の発展科目が不要なので、高2から本格的に取り組むパターンが増えるかもしれない。
公立高校生の場合、学校の教育課程によると思う。科目によっては取り組むといったところか。
首都圏国公立大学の入試難易度上昇
これが困る。しかし、1000人規模のシフトが起きたわけで、全ての首都圏国公立大学に大なり小なりの影響が及ぶと思う。
2025年度入試後、河合塾の偏差値に変化が起きるのかどうか要注目だ。