河合塾の全統記述模試の偏差値を眺めると、私立大学文系学部の偏差値が異常に高い印象を受ける。わかりやすい例は以下だ。
一橋大学商学部 65.0
早稲田大学商学部 67.5
これは、どう考えてもおかしい。
国公立大学と私立大学の偏差値差は5-6ともいわれている。前者の方が母集団が限定される(共通テスト対策をする受験者層に限られる)ことが理由。また、理系と文系の偏差値差もある。理系・文系の比率は3対7ぐらいで、理系の方が母集団が限定される(数学IIIや物理・化学・生物に取り組む受験者層に限られる)。
早稲田大学商学部の偏差値を国公立大学文系基準の偏差値に変換すると60.0-62.5になるかというと、その変換には意味がない。早稲田大学商学部の偏差値67.5は私立文系3科目を対象にした偏差値だ。
自分の考えでは、国公立文系偏差値と私立文系偏差値の互換性はない。表現を変えれば、
国公立文系と私立文系は異種格闘技だ。
国公立文系志望のAさんと私立文系志望のBさんを比べたとき、高校の全履修科目の習得度で評価すれば、Aさんの方が到達点は高いと考えられるが、私立文系入試の土俵では、AさんがBさんに勝てるわけではない。
Aさんが頑張って取り組んできた共通テストで課される数IA、数IIBC、理科基礎2科目、情報が関係なくなる。Bさんは時間を集中投下した文系3科目で勝負できる。当たり前のことを言っているだけだが、この差は大きい。
高1の後半に国公立大学文系を目指すと決めたとき、即ち、共通テスト対策に時間を投入すると決めたとき、国公立文系の土俵で勝負するしかない。異種格闘技である私立文系入試では苦戦を強いられる可能性がある。
一方で、高1の後半に私立文系を目指すと決めたとき、理数系科目が苦手でも関係ない。英語が得意なら十分に戦える。英語の配点割合が40%以上の大学学部が多い。英語を制する者が私立文系を制する。
文系の場合、「東大・一橋を別にすれば、国公立大学より早慶・MARCHを目指した方がいいんじゃないの?」と思えてくる。大学に入ることだけを考えたら、そういうことなのかもしれない。早慶・MARCHは就活でも強い。
いやいや、待てよ。高校の全履修科目を一定レベルで習得したことが活きないわけがない。どうしたらいいんだろう。
異種格闘技なのだから、国公立文系の人は高校・大学で学んだ体系的知識を活かせる職業、自分が優位に立てる場所を見つける必要がある。
簡単ではないが、これが答えだと思う。